14:当然の代償
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いの如き旋回斬りだった。しかしキリトはそれを見事な後方宙返りで華麗に避けてみせ、一瞬遅れてその残像を、半円の扇を描く《ハリケーン》のエフェクトが真横に一刀両断した。
「まだだよ!」
「!」
ユミルは後方へとジャンプステップしながら、片手で懐から何かを取り出し素早く投擲した。距離を空けて着地したキリトの足元めがけて、三つの小さな黒い煌きが空を切っていた。キリトは再び大きくバックジャンプしそれを避け、直後、地面にそれがシュカカッと次々に突き刺さる。
何かとよく見れば、キリトの足跡が残るその場所に、投擲用ナイフが突き立っていた。ユミルのサブスキルなのだろうか。
そして、大きく相手との距離を稼いだユミルは、ここで突如……奇妙な行動に出た。
槍斧を手首のスナップを活かし、真上の空へと高く放り投げたのだ。
「え? なにっ?」
筋力値に物を言わせて放られた槍斧はヒュンヒュンと回転しながら、薄暗くも幻想的な深海色の空へと姿をどんどん縮めていく。
両手の空いたユミルは更に意図が分からない行動を続けた。おもむろに自分のボロ服の袖口を小さな口へと持って行き、布地を前歯で噛んだと視認できた瞬間、そのままビリッと噛みちぎったのだ。
「おっ」
あたし達は意味が分からないままでいる中、マーブルだけは少しだけ身を乗り出して、何やら楽しそうな声を漏らしていた。
「な、なにをしてるのかな……あれ」
「すぐに分かるわ」
ユミルは千切った細長い布切れを口に咥えたまま、後頭部へと両手を回し……
「えっ……? あれは……髪を、結ってる……のかな……?」
アスナの言葉の通り、ユミルはボロ切れをリボン代わりにし、たちまち髪を小さな即席ポニーテールに束ねていた。
そしてギュッと力強く結び終えたと同時に、片手を天へと高く掲げ挙げ――
「――こっからは本気でいくよ……!」
パシィッとその手に、回転しながら落ちてきたハルバードが収まった。まるで、バレエのバトンタクトのように。
ヒュヒュッ、と軽快に数回武器を回転させ、構えを取る。
だが、その構えが今までとまるで違っていた。
隙の無かった直立体勢から……今度は、まるで獲物に狙いを定めるチーターやサーベルタイガーのように、無理無くしなやかに肩と腰を低くした前傾姿勢に。体の向きは対するキリトと垂直で、相手に左肩を見せるように横を向かせている。武器はキリトから隠すかのように後ろ手下段に構えられ、独特ながらも無駄のないスタイルになったように見えるが……
「うん……?」
よく目を凝らして見ていたあたしは、一つ妙な事に気づく。
ユミルの武器の柄を握る位置がおかしいのだ。先程までは柄の先端から三割と七割の地点、力の込めやすいクォータ
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