14:当然の代償
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は、あのビルドには誰が見ても忌避する、甚大な弱点があるからなの。……強力無比に突出した圧倒的な攻撃力の、当然の代償――そう……」
気付けば、腕を組むマーブルの手の中には――気付かぬ内に、投擲用ピックと回復結晶が握られていた。
「あの子の最大の弱点は――――致命的なまでの、防御力不足。……その防御値はたぶん、初期の頃から殆ど変わっていない」
「な……」
それを聞いたあたし達は、言葉を失っていた。
このデスゲームが繰り広げられている狂った世界のHPは、命そのものだ。その減少を抑える防御力は、ダメージから直接救ってくれる最初で最後の砦なのだ。『――防御を疎かにする者は死ぬ。』それがこの世界の鉄則であり、誰もが心得ている周知の事実だ。しかし、ユミルはそれを承知で防御を徹底的なまでに捨て、代わりに得た代償とは釣り合わない見返りを武器に、日々の命懸けの戦いを、さらに危険に晒して闘っているとでも言うのか……。
その考えに至った時には、マーブルが「ヒール」と言って結晶を使用しユミルのHPをフル回復させていた。
……きっと、もしキリトがさっきの一撃の加減を誤るようなことがあれば、彼女は手に隠し持っていたピックを投げつけてトドメを阻害していたのだろう。
「……………」
右端まで完全回復したユミルは、キリトの前で力無く膝をついて、顔を伏せた。
「…………ボクの、負け……だね……」
そう呟いた後、手から斧槍が力なく滑り落ち、カラァンと軽い音を鳴らして地面に転がった。
そして……隠した顔の、目の辺りを手の甲で静かに拭い始めた。
次第に肩が小刻みに揺れ始め、その手の甲から、一つの雫が零れ落ちて、地面に散った。
「う……っう、っぎ……ぇうっ……」
嗚咽を堪える、心の底から悔しそうな泣き声の喘ぎが微かに聞こえる。
やがて後ろに縛った、リボン代わりのボロ切れの耐久力がゼロになって――衣服を破けばそれだけ耐久力が減り、破った布片も耐久力は極めて低く、ごく僅かの間しか存在が持続しない――ポリゴンとなって飛散し。
直後、ふわりと流れるようにポニーテールから元通りになっていく長めの髪が、ユミルの涙を隠す手助けをするように、そっとその横顔を包み隠した。
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