14:当然の代償
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はカウントが刻一刻と減少を続けても微動だにせず、対するキリトも剣を下段に構えたまま、全く動かない。
そしてついにデジタルの数字がゼロになり――
「ッ!」
ドッ、とユミルが無音の気合と共に、半ば飛び込むように一息に距離を詰めながら、後ろ手に構えた斧を振り上げ、キリトの頭上へと打ち下ろした。しかしあくまでレベルが上の余裕か、完全に後手に甘んじる体勢だったキリトは慌てず剣を振り上げ、確りとした挙動で斧の刃をパリィした。相手を斜めに両断するはずだった斧の軌跡は真下へと軌道を変えさせられ、地面へと叩きつけられた。その落下の衝撃による余波を避けるようにキリトは後方へと跳躍、着地と同時に二人は即座に武器を構えなおし、最初の睨み合いへと局面は元通りとなる。
「速い……」
完璧に反応したキリトもさることながら、両手斧を持つユミルの敏捷値も相当に高いのだろうか。筋力を重視するはずの斧使いがこの有様だ。本当に彼女のビルドは謎が多い。
今度はキリトが猛然たる速さでユミルへと突進。迎える彼女も柄を強く握って待ち構え、たちまち宙を裂く剣戟が飛び交う、激しいパリィの嵐となる。その最中で双方のHPは少しも減ることがない。互いが互いの斬撃を、全て打ち弾いているのだ。
キリトの剣術には既に何度も舌を巻かされるものがあったが、ユミルはそれに完全に対応してのけていた。
「すごい……。もともと、片手剣相手の両手斧は鈍重で不利なのに、こんなカードでここまでハイレベルの高速戦が観られるなんて……」
「そうね。……さて、突然ですがここで問題です」
突如、マーブルが教師然と指をピンと立てた。
「実は、ユミルの敏捷値はあまり高くありません。なのに、ここまでの高速戦を繰り広げられるのは一体どうしてでしょうか?」
あたしは思わず「えっ」と声を上げてしまう。
「敏捷値が、高くない……?」
マーブルはニコニコと戦う二人を見ている。あたしもそれに倣った。
「ユミルの筋力値と敏捷値のバランスは、だいたい8:2か、それ以上の極筋力型ってトコね。そこに限っては、あの子は一般的な斧使いとそう変わらないわ」
その言葉に、あたしはむうと唸り考え込む。
二人は未だにソードスキルも放たずに、その場で壮絶なパリィ合戦を繰り広げている。それはあたかも激しいタンゴのカップルダンスのようで、事前に振り付けを打ち合わせしていたと言われたほうが、まだ納得のいく常軌を逸した応酬っぷりだ。
いつぞや、キリトとアスナの訓練がてらの決闘を見ていた時も、いつも思っていたのだが……キリトらはともかく、ユミルも一体どうやったら、そんな瞬く間にどんな形で斧を振り回して攻め込んだり、キリトの神速の剣戟を裁け
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