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トワノクウ
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第二十八夜 赤い海(一)
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くほどに右手の平のしるしは鋭利に痛んでいく。

「おい、あれ!」

 露草が指した。空が、赤い。まるで火事の現場だ。

「妖の気配と、血臭も混じってるな。夜襲でも受けたか」
「っ行きます!」
「これ白鳳! 先走ってはならん!」

 空五倍子に叫ばれ、くうは唇を噛んで踏み止まった。


 程なく彼らは坂守神社から僅かに離れた、敷地と森の境界線に降り立った。神社に入るための鳥居も見える。

「ここからは結界があって俺達は入れない。一人で行けるね?」
「はい!」

 くうは踵を返して駆け出した。




 鳥居を潜るや、体がずしんと重くなった。初めて来た時とは異なり鳳が完全覚醒していたためだろう。

(私が死ぬ結果になったとしても)

 境内に入って石畳を蹴って社を目指した。

 あちこちでピンクのぶよぶよしたモノと巫女たちが戦っている。火矢を使う巫女もいた。火の手が上がったのは、だから。

 彼女らに加勢せず目当ての人物を探していたくうは、

(逢いたいだけなの、潤君に!)

 目の前に立ちはだかる――恋しい少年の敵意に満ちた姿に、底知れない安堵を覚えた。



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