トワノクウ
第二十七夜 あをにあし(三)
[3/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
(今夜また、梵天さんに会いに行こう。きっと聞いてくれる)
かくて、月が中天にさしかかる頃、くうは梵天の部屋を訪なった。
梵天は起きていて、今夜も露台から月を見上げていた。先日と異なるのは、傍らに酒器があり、彼が呑んでいることだった。
「すっかり夜遊び癖がついたじゃないか」
「ごめんなさい。また、お話、してもいいですか」
梵天は薄く笑んで手招きした。くうはぱっと顔を輝かせ、いそいそと梵天の近くまで行って正座した。
「綺麗なお月様」
「残念ながらまだ下弦だけどね。で、今夜は俺に何を聞いてほしいのかな」
見抜かれていることは予想できたので、くうは弱く苦笑した。
「今日、露草さん、私を庇って潤君と戦ってくださいました。私のせいで、怪我も、しました」
弾は貫通していて、鳳の権能ですぐに治せたからいいものの。何か一つでも違えば、露草は――梵天の大事な弟は、また深い眠りに陥っていた。
「でも私は、それを何も思わず見てました。まるで露草さんが傷つくのが当たり前のように」
梵天の目を見るのが怖かった。怖かったが、くうはまっすぐ梵天を見上げた。
「私、白鳳の力で露草さんを起こしてさしあげてから、露草さんが良くしてくださるの、心のどこかで当たり前のことだって思ってました。助けたんだから見返りがあって当然って、私も思ってたんです」
もったいない、そんな大層なことはしていないと、口では言いながら、いざ露草に邪険にされたらくうは大いに憤っていただろう。
本音と建前という、吐き気がするような心の二重作用を身をもって味わって、――分かったことがある。
「でも梵天さんは、見返りがなくてもよかったんですね」
空五倍子に聞いた話では、梵天は不安定だった露草や空五倍子に体を与え安定させたという。彼に返るものが何一つなかったにも関わらず。
なくて平気だったわけがない。傷ついても受け入れたのだろう。それでいいと納得したのだろう。
くうにはできない。感謝がない献身、報恩がない助力は、くうにとっては徒労としかとれない。
だから、助ける相手の心証に関わらず相手を救うのは、勇気であり強さだ。
「尊敬します。嫌われても憎まれても救った、貴方の強さを」
こんな梵天だから、萌黄も特権を授けたのかもしれない。命を左右するという過ぎたる力を使うに足る精神力が、梵天には備わっている。
(もしあまつきに永住できるんだったら、この人をお手本にしよう。形は違っ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ