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トワノクウ
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第二十七夜 あをにあし(三)
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(今夜また、梵天さんに会いに行こう。きっと聞いてくれる)







 かくて、月が中天にさしかかる頃、くうは梵天の部屋を(おと)なった。

 梵天は起きていて、今夜も露台から月を見上げていた。先日と異なるのは、傍らに酒器があり、彼が呑んでいることだった。

「すっかり夜遊び癖がついたじゃないか」
「ごめんなさい。また、お話、してもいいですか」

 梵天は薄く笑んで手招きした。くうはぱっと顔を輝かせ、いそいそと梵天の近くまで行って正座した。
「綺麗なお月様」
「残念ながらまだ下弦だけどね。で、今夜は俺に何を聞いてほしいのかな」

 見抜かれていることは予想できたので、くうは弱く苦笑した。

「今日、露草さん、私を庇って潤君と戦ってくださいました。私のせいで、怪我も、しました」

 弾は貫通していて、鳳の権能ですぐに治せたからいいものの。何か一つでも違えば、露草は――梵天の大事な弟は、また深い眠りに陥っていた。

「でも私は、それを何も思わず見てました。まるで露草さんが傷つくのが()()()()()()()()

 梵天の目を見るのが怖かった。怖かったが、くうはまっすぐ梵天を見上げた。

「私、白鳳の力で露草さんを起こしてさしあげてから、露草さんが良くしてくださるの、心のどこかで当たり前のことだって思ってました。助けたんだから見返りがあって当然って、私も思ってたんです」

 もったいない、そんな大層なことはしていないと、口では言いながら、いざ露草に邪険にされたらくうは大いに憤っていただろう。

 本音と建前という、吐き気がするような心の二重作用を身をもって味わって、――分かったことがある。

「でも梵天さんは、()()()()()()()()()()()()()()()()

 空五倍子に聞いた話では、梵天は不安定だった露草や空五倍子に体を与え安定させたという。彼に返るものが何一つなかったにも関わらず。
 なくて平気だったわけがない。傷ついても受け入れたのだろう。それでいいと納得したのだろう。

 くうにはできない。感謝がない献身、報恩がない助力は、くうにとっては徒労としかとれない。
 だから、助ける相手の心証に関わらず相手を救うのは、勇気であり強さだ。

「尊敬します。嫌われても憎まれても救った、貴方の強さを」

 こんな梵天だから、萌黄も特権を授けたのかもしれない。命を左右するという過ぎたる力を使うに足る精神力が、梵天には備わっている。

(もしあまつきに永住できるんだったら、この人をお手本にしよう。形は違っ
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