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トワノクウ
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第二十七夜 あをにあし(三)
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きないくらいには、まだ立ち直れていない。

「勝手にめんどくさいこと思っててごめんなさい。こんなの露草さんには迷惑でしょうけど」

 くうは手を傷口からどかした。

「おしまいです。どうですか?」

 露草は足を突っ張ったり振ったりして調子を確かめる。

「平気だ」
「よかったです。あ、そうでした! 露草さん」
「今度は何だよっ」
「さっき無理に止めて、落としちゃってすみませんでした」

 ぺこり。頭を下げて上げる。
 露草は道端におかしなものでも見つけたような顔でくうを見ていたが、やがて溜息をついた。

「帰るぞ。掴まれ。今度落としたら置いてくからな」
「は、はい! もうしません!」

 立ち上がった露草は、くうの背と膝裏に腕を回してくうを抱え上げ、大きく跳躍した。

 露草はくうを軽々と抱えたまま、木から木へと飛び移っていく。
 やはり振動は免れず、くうは必然的に露草に強くしがみつく形となった。







 天座の塔に帰り着くなり、空五倍子から熱烈歓迎を受けた。

「白鳳〜〜〜〜〜!」
「うひゃっ、空五倍子さん!?」

 もふもふの毛並みが視界いっぱいに飛び込んだかと思えば、もふもふはくうにしっかと抱きついた。

 空五倍子の熱烈歓迎で呼吸困難になりかけたところを露草に救助された。空五倍子のほうは「やりすぎ」と梵天に一発殴られていた。

 何故こんなにも心配していたのかを尋ねると。

「森の妖が、おぬしらが坂守神社の手勢と鉢合わせしたと知らせてきたのである。露草が守り刀とやり合ったと聞いて肝が冷えたのである」
「んな心配しなくても俺だってもう、奴らと真っ向からぶつかるほど考えなしじゃねえよ」
「ふーん?」

 梵天は疑わしさを隠さない相槌を打った。

「で、くう、本当のところは?」
「潤君は銃持ってるからやめてくださいと申し上げましたのに、そのまま戦闘にもつれ込みました」
「おまーッ!!」
「ま、お前みたいな直情径行が一戦やらかさないわけないよね」

 ぐぐぐ、と露草は拳を震わせ、頬を紅潮させている。可愛げのあるひとだ、とくうは思った。

(それに、私、嬉しい。私のことで梵天さんも空五倍子さんも、こんなに心配してくださった。こんなに素敵なことってない)

「何だい、にやにやして」
「くう、そんな顔してました?」

 ぺたぺた。くうは自身の顔を触る。自分ではよく分からない。

「分からないならいいさ。――俺は寝直すよ。空五倍子、枕になれ」
「お前まだそれやってんのかよ」
「悪いか? そのためのこいつだ」

 ということは、梵天はまた今日も眠れない夜を過ごすのだ。塔に入っていく梵天たちを見送りながら、くうは思い致す。


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