飛竜の黒水晶
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決着はついた。
右腕から血を流しながら普段着の鎧に戻るエルザの後ろ。
侍のような服装の、目隠しをした青年が倒れている。
名はムサシ。妖刀・村正を扱う災厄の道化の魔導士だ。
「うっ…ぐぅぅ……」
小さい呻き声を上げるムサシ。
青いスカートを揺らしエルザが振り返ると―――――村正が、赤く輝いていた。
「お…お前……」
目を見開く。
“紅喰らい”の時とは比べ物にならないほど輝く刀身。
その刀身が吸収しているのは――――――――ムサシだった。
驚くエルザに対し、ムサシはそれが解っていたかのように薄い笑みを浮かべる。
「やはり、これが最後だったか…」
「最後、だと?」
「妖刀・村正の“紅喰らい”…血を与えすぎると、所有者そのものが刀に吸収される……」
そう呟く間にも、ムサシの両足と左腕が刀に吸い込まれる。
ゆっくりと、右手の先が赤い光に包まれ、呑み込まれるようにして消えていく。
「妖精女王……1つだけ、教えてやる…」
「!」
もう、首と顔しか残っていない。
ホラー映画さながらの光景だが、血は一滴も流れていなかった。
そんな状態になりながらも、ムサシは口を動かす。
「お前達ではシャロン様には勝てない……何故、なら……」
耳が消える。
右目が光に包まれる。
村正は、ムサシを吸収し続ける。
「あの方は……星――――――――」
ムサシが何かを言いかけた。
が、その先を言うのは不可能だった。
―――――言う前に、村正は彼を完全に吸収していたから。
「星……?おい、星が何なんだ!?一体どういう…」
中途半端に終わった言葉に、エルザが叫ぶ。
が、答えは返って来ない。
答えを言うべき人間は、既に刀の中にいる。
「……」
エルザは強く目を瞑り、何かを振り払うように数回頭を振って駆け出す。
所有者を失った村正は、光に赤い刀身を煌めかせた。
「ガアアアアアッ!」
響く、飛竜の咆哮。
クエレブレとティフォーンの混血、通称クエレフォーンの黒飛竜アイゼンフロウは、鮮血を流し込んだように赤い瞳で敵を睨みつける。
「召喚―――――切り札の騎士・光輝く菱の槍を手に」
“処女宮”フラウの魔法陣から、不思議の国のアリスに出てくるようなトランプの騎士が現れる。
全員揃ってマークはダイヤ。赤い兜に赤い靴、赤い籠手に赤い槍を構えてアイゼンフロウを見据えていた。
が、普通に考えて、トランプと飛竜なんて最初から決着が見えているようなもので。
「アイゼンフロウ!」
「グルウウ
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