飛竜の黒水晶
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離される。
アイゼンフロウが自分の意志で、サルディアを引き離した。
ガン!と音を立ててサルディアは壁に叩きつけられる。
「アイ…ゼン……フ…ロウ……」
呼び慣れている名が、途切れ途切れになる。
その声に反応したアイゼンフロウが、サルディアの方を向いた。
赤い瞳が―――――細められる。
「……!」
器用だ、と思った。
飛竜のアイゼンフロウに、あのポーズが出来るなんて。
そして、サルディアはその意味を知っていた。
天を指さす、妖精の尻尾の人間なら誰だって知っている、あのポーズを。
サルディアの目に、涙が浮かぶ。
「強制送還っ!アイゼンフロウ!戻って!」
右手を向け、サルディアは叫ぶ。
普段ならそれで戻るはずだった。
―――――普段、なら。
「戻ら、ない…戻らないよっ……!」
ポタリ、と。
サルディアの目から涙が零れる。
ポタポタと、落ちていく。
痛いほどに拳を握りしめる。
「戻って……お願いだから…戻ってよ……」
答えはない。
フラウはサルディアに目を向け、嘲笑うように口角を上げる。
そして――――――叫んだ。
「我らが女王の誇りの為に!」
その瞬間。
全ての武器が、放たれた。
何もせずに立ち尽くす、アイゼンフロウに向かって。
サルディアになんか見向きもしないで。
「あ…あ……」
サルディアの、呻くような声が零れる。
剣がアイゼンフロウの翼を貫き、槍が足を貫いた。短剣は体中に突き刺さり、棍棒は鋭い爪を容赦なく潰していく。
痛みに表情を顰めながらも、アイゼンフロウは声を上げない。
耐えられなくて、サルディアは顔を逸らす。
「アグ……ガルル…」
「!」
小さい声を、耳が拾った。
顔を上げると、アイゼンフロウがサルディアを見つめている。
体中を貫かれながら、アイゼンフロウは呟いた。
「…サ…ル……ディ……ア……」
それは、彼女の名。
共に戦った、契約者の名。
いつだって一緒だった、友達の名。
人間の言葉が喋れないはずのアイゼンフロウの、最初で最後の言葉。
「ダ…ダメ……やめて……」
震える手を伸ばす。
いくら手を動かしても、アイゼンフロウを掴めない。
いつだって手の届く距離にいたのに、届かない。
「やめて……!」
届かない。
届かない。
視界が霞む。
ボロボロと、涙が零れる。
どれだけ拭っても、ボロボロと。
「トドメを刺しなさい―――――孤独な道化師」
黒い、道化師の絵。
身の丈を超える剣
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