§58 強敵
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、とばかりに鴉が恵那の肩に乗った。
「兄さん……」
その光景の中、どこからか声が聞こえた。ほんの幽かな声量ではあるが、静寂な空洞にその声が良く響いた。
「…………これは悪夢だ。悪い夢だ。寝て忘れて?」
葡萄の色に、義妹の瞳が染まり――――意識を失う。
「……良いの?」
「……うん」
トラウマになりかねない記憶を、植え付けたくはない。ついでに周囲の学生からも意識を奪う。幸い女生徒だけだったからディオニュソスでそのまま消去する。
「それよりも、こっから先に出ようか。被害者含めて全員いますか?」
黎斗の問いかけに、平伏した男が肯定を示す。
「わかりました」
黎斗が口にするのは太陽神の権能。全てを更地に還す、焦土の一撃。
「天より来たれ――――」
瞬間、爆音。次いで振動。黎斗は出口が出来たことを確信する。
「こっち。んじゃあみなさん、被害者の輸送をお願いしますねー」
呆気にとられた顔でこっちを見てくる彼らを無視し、黎斗は恵那を先導する。
「……あの人たちどうするの?」
小声で恵那が問いかけてくるが、黎斗にも名案はない。
「いや、どうしようね。殺しても意味ないでしょ。彼らの本国更地にしてやろうかとも思ったけど、したらしたで世界情勢が大変めんどくさくなりそうだし」
主に食料供給とか。
「……れーとさんなら普通に出来そうで怖いよ」
「大体さ。欧州は今カンピオーネ何人かいるから更地にするのは時間がかかるんだよ」
アレクとヴォバン、ドニの三人を同時に相手するのは少々骨が折れる。誰が聞いても唖然としそうな理屈を、平然と黎斗は述べる。
「色々前提がおかしいよ!?」
それにそんなことしたら大勢の一般人に迷惑がかかる。如何に天罰を与えるためとはいえ、そこまでするのはなぁ、などとぼんやり考え――黎斗の脳裏に考えが浮かぶ。
「よし、組織を作って彼らを下部組織にしよう」
「……はいぃ?」
何を言い出したんだコイツは、と言わんばかりの恵那の声が、迷宮の中に溶けていった。
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