§58 強敵
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して、迷宮の入り口まで帰ろうとする。
「待った。ぶっ壊すから巻き添え入りかねないぞー」
かぁー。
それを早く言えよ兄弟。そんな口調で戻ってくる鴉。
「生首が……喋ってる……」
「夢ならさめてよぉおおおお!!!」
学生が絶叫する。悲鳴を上げる。失神する。誰かが漏らしたのか、アンモニア臭が凄まじいことになっている。少なくない人数が失禁しているようだがしょうがない。街が壊れるわ見知らぬ場所に閉じ込められるわ、巫女が刀持つわ。あまりにも常識の外側すぎる。トドメに生首が喋るのだ。こんな光景を見ても意識を保っている学生は屈強な精神と褒めるべきか、異常精神の持ち主と嘆くべきか判断に迷う。
「れーとさんが死んじゃった……」
白い袖が黎斗の頭を包む。暖かい感触。ふにふにと、やーらかい。恵那の声が近くで聞こえるし、恵那に抱きしめられているというべきか。なんとまぁ役得な。
「れーとさん……」
頭に湿っぽいのが当たる。泣かせてるっぽい。どうしよう。声かけられる雰囲気じゃない。
「いや、さっきその首喋ってたような……」
誰かが後ろから喋っているが、恵那の耳には入っていないようだ。すすり泣きが聞こえてくる。
かぁー。
鴉が鳴く。カイムの権能を使うまでも無く。コイツの言いたいことはわかる。
――――おい、お前。泣かせてんなよ。なんとかしろよ。
それが出来れば苦労はしない。だが、このままにしておくのもよろしくない。
「まだ、恵那何もれーとさんから聞いてないのに……」
黎斗は直感で悟る。やばい、なんかこのままだと公衆の面前でこっ恥ずかしい展開になる、と。もはや一刻の猶予も無い。
「あのー、恵那さん……?」
恐る恐る、声を掛ける。
「黎斗さん!?」
ぎゅっと、抱きしめられる。
「良かった……良かった……!!」
「……なんか、心配かけたようでごめん」
でも、カンピオーネなら復活割とあるだろうに。大げさすぎないか? という疑問が湧くが、次の恵那の言葉で氷解する。
「王様達で不死身の権能を持つ人もいる、って聞いていたけどさ。生首だけで生きてる話なんて初めて聞いたよ」
「あ、そーゆーね……」
たしかに、護堂の例を見るまでも無く五体満足で不死身がほとんどだ。自分のような、身体の一部だけ生存、なんて権能は珍しいだろう。
「ごめん恵那。僕の首持ってて」
女の子がやわらかい、とかそういう煩悩抜きにお願いしたい。切実に。身動き取れないし。鴉は掴むと来ないから髪引っ張ってるから痛いし。黎斗のそんな様子を悟ったのか、恵那は即答で
「うん、わかった」
と答え黎斗を両手で抱きかかえる。俺も忘れるなよ
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