暁 〜小説投稿サイト〜
魔王の友を持つ魔王
§58 強敵
[2/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
格好をつける黎斗の手の中で、役目を終えた鉄版がひしゃげて砕け散る。同時に、黎斗の立っている大地に亀裂が奔る。黎斗を中心に、入った無数の罅は、黎斗を奈落の底へと突き落す。

「計画通り」

 ニヤリと笑って大迷宮内部へ侵入する黎斗。地下に埋まった大迷宮の天井を、地表ごと切り裂いて侵入する、という作戦が成功してちょっぴりテンションが上がる。が、落ちてくるのは黎斗だけではない。

「へぶぅー!?」

 数秒後、黎斗は大量の瓦礫に押し潰されて死亡した。

「痛っー……」

 脳漿を飛び散らせながら、黎斗は周囲を観察する。自分の血痕以外は見られない……と信じたい。一人だったらヤマの権能で蘇生できるが複数は無理だ。

「わーい。完全に掴まってらー。あはははは……」

 しかも、無理な姿勢で再生してしまったらしい。非常口の看板に描かれる人間のような姿勢で仰向けだ。正直この体勢は辛い。

「瓦礫どかすのもなぁ」

 ジェンガのように、下手にどかしたら崩れ落ちてきそうだ。そしたら被害が更に大きくなる。権能で作った建造物が簡単に壊れるのか、という疑問もあるが。万が一壊してこの地区一体地盤沈下とかしたら笑えない。

「神倒すよりこっちの方が辛いってどういうことなの……」

 大迷宮使うんじゃなかった。使ったとしても、地下に作り出すんじゃなかった。繊細な、頭を使う能力は無理だ。

「脳筋ばんざーいぃ……」

 脱力しながら、自分の首を叩き斬る。血が飛び散り、頭がころころと転がり落ちる。

「あたっ、いてっ」

 瓦礫に鼻を打たれ目を潰され、重力に従って転がって――鴉の足が頭を掴む。

「ヘルプ。僕をこのまま連れてって」

 かぁー。

「さんきゅー」

 呑気な鴉は黎斗の依頼を了承し、足で髪を掴んで飛び始める。

「いたいいたいいたい髪は掴まないで!!!」

 お前は暢気だなぁ、などと言わんばかりの視線で鴉が鳴く。黎斗の生首を掴まえて、鴉は羽ばたき大迷宮を進んでいく。

「あ、そっち右で」

 適当に、なんとなく道を選んで進んでいく。ラファエルの権能もあって迷子には強い。多分、たどり着けるだろう。多分だけど。



●●●


「あ、いたいたー」

 かぁー。

「おぅ、お疲れ。ありがと」

 ほら、こいつらだろ? と聞いてくる鴉にお礼を言う。

「あ、黎斗さん来……た……?」

 振り向いた恵那の顔が強張る。後ろの魔術師らしき人々の顔が蒼白になる。

「ぎゃああああああああああああああああああ!!!!」

 絶叫が迷宮内に反響する。煩い。超うるさい。

 かぁー。

「あだっ」

 やってらんねぇ、とばかりに鴉は黎斗の頭をほっぽりだ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ