§58 強敵
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格好をつける黎斗の手の中で、役目を終えた鉄版がひしゃげて砕け散る。同時に、黎斗の立っている大地に亀裂が奔る。黎斗を中心に、入った無数の罅は、黎斗を奈落の底へと突き落す。
「計画通り」
ニヤリと笑って大迷宮内部へ侵入する黎斗。地下に埋まった大迷宮の天井を、地表ごと切り裂いて侵入する、という作戦が成功してちょっぴりテンションが上がる。が、落ちてくるのは黎斗だけではない。
「へぶぅー!?」
数秒後、黎斗は大量の瓦礫に押し潰されて死亡した。
「痛っー……」
脳漿を飛び散らせながら、黎斗は周囲を観察する。自分の血痕以外は見られない……と信じたい。一人だったらヤマの権能で蘇生できるが複数は無理だ。
「わーい。完全に掴まってらー。あはははは……」
しかも、無理な姿勢で再生してしまったらしい。非常口の看板に描かれる人間のような姿勢で仰向けだ。正直この体勢は辛い。
「瓦礫どかすのもなぁ」
ジェンガのように、下手にどかしたら崩れ落ちてきそうだ。そしたら被害が更に大きくなる。権能で作った建造物が簡単に壊れるのか、という疑問もあるが。万が一壊してこの地区一体地盤沈下とかしたら笑えない。
「神倒すよりこっちの方が辛いってどういうことなの……」
大迷宮使うんじゃなかった。使ったとしても、地下に作り出すんじゃなかった。繊細な、頭を使う能力は無理だ。
「脳筋ばんざーいぃ……」
脱力しながら、自分の首を叩き斬る。血が飛び散り、頭がころころと転がり落ちる。
「あたっ、いてっ」
瓦礫に鼻を打たれ目を潰され、重力に従って転がって――鴉の足が頭を掴む。
「ヘルプ。僕をこのまま連れてって」
かぁー。
「さんきゅー」
呑気な鴉は黎斗の依頼を了承し、足で髪を掴んで飛び始める。
「いたいいたいいたい髪は掴まないで!!!」
お前は暢気だなぁ、などと言わんばかりの視線で鴉が鳴く。黎斗の生首を掴まえて、鴉は羽ばたき大迷宮を進んでいく。
「あ、そっち右で」
適当に、なんとなく道を選んで進んでいく。ラファエルの権能もあって迷子には強い。多分、たどり着けるだろう。多分だけど。
●●●
「あ、いたいたー」
かぁー。
「おぅ、お疲れ。ありがと」
ほら、こいつらだろ? と聞いてくる鴉にお礼を言う。
「あ、黎斗さん来……た……?」
振り向いた恵那の顔が強張る。後ろの魔術師らしき人々の顔が蒼白になる。
「ぎゃああああああああああああああああああ!!!!」
絶叫が迷宮内に反響する。煩い。超うるさい。
かぁー。
「あだっ」
やってらんねぇ、とばかりに鴉は黎斗の頭をほっぽりだ
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