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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百三十四話 名剣か魔剣か
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なくてはなりません」
「……」
皆が呻いた。国内対策か、ネグロポンティの意見には一理ある。
「考えている事は分かるが、現役復帰は出来るだけ避けた方が良いだろう。私は賛成出来ない」
ホアンがはっきりと反対意見を出した。そして皆を見回して“少し聞いて欲しい事が有る”と言った。
「ヴァレンシュタイン諮問委員長に危惧を抱いている人物がいる。私が知っているのは一人だがもしかするともっと多いのかもしれない」
危惧? 皆が訝しげな表情をしている。
「その人物は諮問委員長の影響力が軍、政府、経済界に大きくなり過ぎるのではないか、いずれは独裁的な影響力を持つのではないかと案じていた。民主共和政国家においては危険な状況になるのではないかとね」
誰も何も言わない、ただ黙ってホアンの顔を見ている。確かにヴァレンシュタインの影響力は大きい。
「勘違いしないで欲しいのだが彼は諮問委員長を否定しているのではない、彼を肯定している。それ故に不安を持ち憂いている」
「彼の不安には一理あると思う、しかし私は彼の見解に与しない。ヴァレンシュタイン諮問委員長をこれまで見てきたが彼には野心が無い、そして権力への執着も無い。誰よりも平和を望みそして人類社会の繁栄を願っている。多少性格は悪いが極めて有能で誠実な政治家と言えるだろう。独裁とはもっとも遠い所に居る」
何人かが頷いた。
「だからこそ我々は彼を大切に扱わなければならないと思うのだ。彼を現役復帰させるのは難しくは無い。しかしそれを行えば同盟市民の中には政府はヴァレンシュタイン委員長に頼りきりだ、ガバナビリティは無いと判断する人間も居るだろう。彼が政府を自由に操っている等と勘違いする人間も出るはずだ。それは彼のためにならない」
彼方此方から呻き声が聞こえた。
「そして同盟にとっても極めて不幸な事だと思う。我々はその不幸な事態を作り出してはならない。切れ味の良すぎる名剣であるが故に使い方には注意しなければならないのだ、魔剣であると思われてはならんのだよ。周囲に畏れられては名剣とは言えなくなる……」
ホアンが皆を見回した。誰も反論する人間は居なかった。
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