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トワノクウ
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第十夜 吟変り(三)
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様!!」

 潤が血相を変えて壇上に上がって、銀朱を支え起こした。
 銀朱は右半面に爪を立てて押さえている。苦悶に歪む表情。くうはただおろおろするしかなかった。

「長く外の空気に当たってはお身体に障ります。奥に戻りましょう」

 銀朱は大丈夫だと告げたいのか潤を押し返し、一度、くうを顧みる。

 潤に支えられて銀朱が立ち、くうの横をすり抜けて広間を出ていく。くうは一人広間に残された。

(憎まれてる)

 とてもすなおに納得できる、そんな銀朱の目だった。





 潤と銀朱が退席してからどれほどそうしていたのか。考えを巡らせていたくうを訪ねる者があった。

「佐々木さん……」
「おや。姫様や潤朱さんはいらっしゃらないんですか」

 佐々木とまともに話すのは二度目だが、一度目から変わらず飄々とした掴み所のない御仁だ。

「少し前に、銀朱さんの具合が悪くなって出て行かれたんです」
「あらら、すれちがいでしたか。それじゃしょうがないですね。姫様のあのお身体ですし」

 銀朱は体が弱いのか。それとも難病や障害を抱えているのか。
 どれにせよ、くうにはかける言葉がない。朽葉や薫のときと同じ無力感を、かすかに感じた。

(潤君や薫ちゃんなら、ああいう人にも上手いこと言えるんでしょうね)

 カラッポの自分とは違って、たくさんのものを持っている二人なら。

「ところで佐々木さん、どうして坂守神社に? 陰陽寮の方はよくここにいらっしゃるものなんですか?」
「いえね、今度予定してる討伐が神社と共同でやることになってるんですよ。その打ち合せも兼ねて、ここに頼りになりそうな人材を借りに来たんですけどね。姫様がああなって以来、妖の害は増すばかり。人手はいくらあっても足りませんよ。かえって人手を割かされるとは予想外でしたが」

 ほえ? くうは首を傾げる。

「君の見張りに何人がウチのをお貸しすることになりまして」
「そりは貴重な人員を奪ってしまいましてご迷惑をば」

 こうなれば平身低頭より他は選択の余地なし。

「おやおや。てっきり睨まれでもするかと思いましたが」
「皆さんを右往左往させたのはくうですから。はっきり無実だと分かっていても証明する手立てがないのが辛いとこですが」

 彼岸なら弁護士を呼べるのに。この世界、冤罪者に優しくない。

「これはお優しい娘さんだ。ですがねえ、篠ノ女さん、度を越した優しさは裏を疑われるだけですよ。特に私のような人間にはね」

 優しい。篠ノ女空とはもっとも縁遠い形容句に、くうは小首を傾げる。

「君、とっても胡散臭いですよ」

 虹彩や瞳孔が失せた白目が、のっぺりとくうを見据える。

「悪いのですが私は性悪説の人間でして、あ
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