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Eve
第一部
第一章
二人の仕事(1)
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ぎているだけで、その世界に囲まれ過ぎているだけでな。
「……」
「……行こう。恭夜くん。」
俺と美羽は、路地裏の細い道から一歩を踏み出す。開けた大きな通りへと。第三大通りと呼ばれている、この街の主要大通りへと。
この場所での仕事は二週間ぶりくらいになるか?前に来た時よりも、どうだろう。活気という活気はもう殆ど感じられないのは変わりない。ふとした喜びに顔を綻ばせるような人も、まだここにはいないだろうとは思うけれども。
「今日もひどいな……」
「ここは、いつもだよ……」
俺たちは近場にあった薪火の灯火の中から、眺めの薪を一本取り出して手元の明かりを確保した。まだ昼とはいえ、空から降り注いで然るべき陽光のほとんどは分厚いスモッグに遮られて、ほとんどが地表には降り注いでこない。日の僅かな明かりこそあれども、その明かりを頼りにしてこの場所を散策して行動するには、少し頼りなかった。
それに。この場所は危険といつも隣合わせだからな……。
俺たちはゆっくりとあたりを見回すが、やっぱりこの場所は今日もひどい有様だった。腰を落ち着ける事ができる人は須らく下に俯き、微動だにせず始終無言でいる。老若男女。みながみな、ほとんど動こうともせず、きっと動くこともできない人間も多数いる。
いや。むしろここでパワフルに蠢く人間がいたら……そいつからは真っ先に逃げなければならないと思った方がいいけれども。目をつけられたやつが男子だったらまずその場で惨殺され、女子だったら強姦の末に結局は殺されるから。
俺は灯火を上に翳し、なるべく遠くまでをこの場で見渡せるように調整する。
そうだ。こんな場所で元気にゴソゴソと蠢いている人間なんて、盗賊連中。強盗を生業にしている人間以外にいないんだ。悲しいことにな。
どこで間違えたのか。生きることを選び、この世界の運命と戦おうとしたまではいいが、その戦う方法を誤った人間たち。この世界での強盗は悪でも何でもない。法が機能していない世界での強盗なんてものは、ハイエナと同じだ。人から獲物を奪い、一目散に逃げ去る。もし相手が貧弱そうならば殺してでも奪い去って、適わないと悟れば自分に危害が加わらないうちに一目散に逃げ帰る。仲間内でも奪い合いが絶えない汚い世界に生きるゴミ野郎どもだ。
そんなハイエナ連中だって、そんな世界に生きているからには腕っぷしも強ければ洞察力にも長けている。洞察力で相手を見抜き、腕っぷしで相手を制圧する。場合によっては惨殺する。
連中に出会っちまったら、まだ子供の俺たちが勝つことはきっと難しいだろう。見つかるやつが俺だけならまだいいが、そこに美羽が居合せたら……。
「……」
「ん、恭夜?」
俺は無言で美羽の頭を撫でる。美羽は不思議そうに俺を見ながら、片目を閉じてくすぐったそうにした。
こんな美羽がだ。万が一にでも俺だ
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