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トワノクウ
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第十夜 吟変り(一)
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こう》でやった授業内容でも暗唱してみせようか? それとも楽研で今まで()った曲ぜんぶ唱えば信じる?」

 まくし立てる内に、みじめさが加重されてゆく。潤にも分かる篠ノ女空の証明が「その程度」しか思いつけない。
 その程度。その程度。何もかも「その程度」の成分でしか出来ていない篠ノ女空。

「篠ノ女、落ち着けっ」

 潤がくうの二の腕を掴んだ。腕力が強い潤をくうには振りほどけない。くうは必死で潤の胸板に手をやって押し返した。

 思考が乱れる。感情起因性の言語しか生み出せない。彼だけだ、くうの頭をここまで掻き乱せるのは。
 そうだった。この世界に来るまでは、彼がくうから理性を追放するただ一人の存在だった。

「放して! 私だって信じてないなら、その名前で呼ばないで!」

 そのとき、御簾が開いた。



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