第一部 刻の鼓動
第一章 カミーユ・ビダン
第二節 配属 第三話 (通算第8話)
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カミーユたちがグラナダの連合宇宙軍に着任して数週間が過ぎた。
新任の少尉など階級が高いとされているだけで、実際の話、直属の部下がいる訳ではない。陸軍や海軍ならばまた話も違うのだろうが、モビルスーツパイロットは空軍の戦闘機乗りに匹敵する。整備兵の方が年もキャリアも上とくれば、手伝いの一つもやっておかなければならない。仲良くなっておけば、何かと都合がいいものだった。
手荒い新歓コンパも終わり、カミーユはグラナダ基地所属月方面軍第一〇三機動防衛大隊第一防衛中隊フラガ小隊に配属させられた。与えられた機体は、改修が済んだばかりのRGM−79R《ジムII》だ。士官学校でも基本操縦は《ジム》を愛機としていたので、さして違和感がなかった。チューニングが自分用になっていないこともあって、機動性が不充分だとは思ったが、それは整備長に頼んでみればいいことだ。
「ようやく非番かぁ……カミーユは明日予定ないだろ?どうせ暇してるんだから、一緒に街いこうぜ」
「ランバン、ど〜して、俺が暇だって思うんだ?」
「だって暇だろ?」
小隊も一緒、部屋も隣、これで非番の日も一緒に居たら、あっちの世界の人間だと思われてしまう。それでなくてもカミーユはスポーツマンの割には線が細く名前が女っぽいこともあってからかいの対象にされがちだった。ランバンはそういうところがないから付き合いやすかったが、だからこそ、ここでは誤解されやすかった。
「明日はワイヤードクライアントを組み立てたいんだ」
「ちぇっ、グラナダ見物でもしようと思ってたのにさ」
グラナダ見物は少し心を動かされる。グラナダはカミーユにとっても初めての街なのだ。ワイヤードの組み立ては夜にすることにして、ランバンと街に出ることにした。
「で?何処に行くのさ?」
「当然、グラナダ歴史博物館だろ。一年戦争時代のジオンのモビルスーツなんかも展示してあるらしいぜ」
ランバンはジオニック通で、ジオンのモビルスーツに詳しい。てっきりジオニック社にあるモビルスーツ博物館に行くとばかり思っていたが違うらしい。そう思って聞いてみると「あそこは予約制だし、民間人ならともかく、俺ら軍人は……な」とのことだった。それもそうか、と納得した。
翌日、グラナダ市街西地区にあるグラナダ歴史博物館に入ると、ランバンがパンフレットを取ってくる。ランバンの目当ては新館らしいが、一通り見て回ることにした。
――月面恒久都市〈グラナダ〉は宇宙世紀〇〇三四年、サイド3建設のために設置された連合第二の月面恒久都市です。丁度月の裏側にあるグラナダは月の自転と公転周期が等しいために〈フォン・ブラウン〉市のように街から地球を見ることができない都市で……
手にしたナビゲーターから音声ガイダンスが流れる。録音には違いないが合成音声ではないのが驚きだった。ガイ
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