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ノヴァの箱舟―The Ark of Nova―
#7『ファーストリべリオン』:5
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とがないほど大きかった。

「……コーリング様!!」

 立ち上がって、素早く少年に近づくチャイネイ。という事は、あの少年が第九師団が仕えるという《七星司祭(ガァト)》の一人、コーリング・ジェジル――――!?

 なんて幼いのだろうか。もちろん、外見通りの年齢であるとは分からない。だが、メイの直感は彼が外見通りに幼いという事をつげていた。こんな少年が、巨大組織《教会》を統治する七人の一人であるという事に、メイは奇妙な感覚を抱いた。それは怒りや哀切だったようにも、困惑だったようにも思えた。

「帰るよ、チャイネイ。イーリンたちも」
「「はっ!」」

 臣下の礼(?)を取って、第九師団が撤退していく。最後にコーリングはこちらを振り返った。その瞬間、彼の纏っていた重圧とでもいうべきものが薄れた。彼はただの幼い少年の、無邪気すぎる笑顔を浮かべ、言った。

「面白いもの見せてくれてありがと!また会おうね」

 そしてチャイネイもまた、こちらは無表情のまま言うのであった。

「決戦は持ち越しだ。だが、この街の《教会》支部には近づかないことを忠告する。今だ第九師団は待ち受けているぞ」
「そうか……じゃぁいいや。今日はこれくらいにしとくよ――――また会おう、第九師団」

 キングからの言葉を受け取ると、コーリングとチャイネイは、姿を消した。転移魔術に近い何かなのだろうか。恐らくはこの街の《教会》支部に戻ったのだろう。

「……」

 戦いは終わった。と言うのに、キングの表情はそこそこ硬かった。

「……キング?」
「ん?ああ、ごめん。ちょっと考え事をしていてね……シュート」
「はっ!」

 キングに呼ばれ、シュートが素早く近づいてくる。チャイネイを始めとする第九師団と言い、《魔王》のレギオンと言い、メイの周りには打てばすぐ来るような素早い臣下ポジションが多い気がする。

「リビーラに伝えろ。新しい仲間が見つかった」


 
 ***



「どうかしましたか?チャイネイ様」
「いや……」

 Aランク《箱舟》である、第九師団のホームシティ、《知識》へと向かうソーサー。その中で、チャイネイは浮かない表情をして考え事をしていた。

「とにかく一度休憩なさってください。ほら、お茶」
「ああ……ありがとう」

 イーリンの差し出してくる烏龍茶をとると、彼女は顔を真っ赤にして「べ、別にチャイネイ様の為だけではないですから!コーリング様にお茶を入れたついでですから!」と叫んで、パタパタと去ってしまった。

 だが、そんなことはチャイネイの眼に入っていなかった。脳裏で何度も再生されるのは、《魔王》との戦いの最中に見た、あの奇妙な映像。

 人間ではない自分に向かってほほ笑む、銀色の髪
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