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ノヴァの箱舟―The Ark of Nova―
#7『ファーストリべリオン』:5
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 イーリンが素早く団員たちに指示を飛ばす。団員たちはイーリンの周囲に集合するとすぐに散開、チャイネイと《魔王(キング)》と名乗った男を取り囲むように並んだ。まるでコロシアムの様な形状だ。実によくできた仲間たちだと思う。こんなふうな、気の利いた陣形すら作ってくれるのだから。

「……ククリ、シュート。メイをお願い」

 《魔王》が背後の二人の配下に指示を飛ばす。砂色の髪の少年と、赤紫の長髪の少女が即座に反応し、《魔王》と共に現れた金髪の少女を守るように取り囲む。どうやらあの金髪の少女は、先ほど相手をした二人組よりも階級は上の様だ。

「かしこまりました、我が王」
「ほらほらお姫様、こっちだよ」
「あ、ちょっと……キング……!」

 手を伸ばした金髪の少女にほほえんで、《魔王》はこちらを向く。その眼に宿る感情は、明らかな闘争心。慇懃に歪められた口元には、しかし獰猛な色が混じっていた。

「お待たせ。さぁ、はじめようか?」
「望むところだ」

 実力は未知数―――――全力で行かせてもらう。

 実際のところ、チャイネイが一人で戦おうとしているのは単なる我儘だ。強敵の気配がする男と、たった一人で戦ってみたい――――それは、武人としてチャイネイが抱く願望の一つだ。

 チャイネイは体中のエネルギーを《虎》の《刻印》に流し込む。それだけではない。第四チャクラを解放させ、ダメージに反応して回復を行えるように構える。イーリンも使いこなした第四チャクラは、回復をつかさどるチャクラ。これは体力・精神力、あらゆる面での回復であり、さらにはこうしてトラップのように事前にしかけることで、ダメージに反応して回復する《反応回復魔術》としても使用することができた。もっとも、チャクラは《魔術》の対極にあたる《霊術》の部類なのだが……。

 めき、めき、と音を立てて、チャイネイの体が虎と化していく。完全な獣化は起こさず、半獣人状態となるにとどめておく。完全に獣になってしまうと、人間との対決では不利になる場合が多いからだ。なお、まれに担当する異形の怪物達……どこからあふれだしたのかは知らないが、《ラグ・ナレク》以前の『どこかから流れ着いた異形達』の末裔と思われる……と戦う際には、逆に完全に虎の姿となった方が戦いやすい場合の方が多い。

 解放された獣のパワーを足に集め、跳躍の準備。上半身の動きを使う技にとって重要なのは、上半身そのものの動きよりも、下半身の動き。足場がなければうまく剣を振れないように。

「……行くぞッ!!」

 獣化した腕を振るって、凄まじいスピードでの突進が、《魔王》に踊り掛かった。



 ***



 ――――危ない!

 反射的にそう叫びそうになったメイは、直後のキングの行動に目を見開いた
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