トワノクウ
第二十七夜 あをにあし(二)
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らは細い硝煙。錫杖を構えて立つ露草の表情はいささか以上に強張っている。
「次は、当てる」
潤は弾の再装填もせずピストルを無感動に連射する。露草は焦燥をあらわに超人的な(というと語弊があるが)動きで弾丸を避け、時には錫杖で弾く。
(銃相手じゃ勝ちようがないと思いましたが、これならいける!?)
くうの顔につい笑みが広がったのと同時、銃声が轟いた。
これも避けただろうと特に心配もしなかったのに、目の前の光景にくうは驚愕した。
露草ががくんと頽れた。歯を食い縛り、右足の脛を手で押さえている。じわじわと袴に赤が滲んでいくのが見て取れた。
(二挺目!?)
どんな手品か。潤の左手には右手のピストルと同じ仕様のものが握られていた。
「終わりだ、天座の樹妖」
潤の親指が撃鉄を起こす。くうは、動いた。
「もうやめてください!」
くうは露草と潤の間に飛び込み、露草を背に庇って銃口を眼前に受けた。
くうは白鳳のおかげで死んでも生き返る。露草のためなら一度くらい命を使い捨てにしても惜しくない。
潤はくうにピストルを突きつける。
苦々しく口の端を吊り上げる潤を、説得しようとはすまい。今の篠ノ女空の優先順位は露草が上だ。
「どけ、篠ノ女」
「……どきません」
「どけ!!」
「いやです!!」
叫ぶや否や、銃声がして、肩に激痛が走った。
「〜〜〜〜〜っ!!」
「くう!!」
くうは肩を押さえて蹲った。
撃たれた。潤に。今度は号令を下しただけでなく、直接、傷つけられた。
顔を上げる。必要以上の厳しさを貼りつけた潤の顔。不自然で無理のある作り顔。
「俺は銀朱様の守り刀だ。お前がそっち側につくなら、敵だ」
(ああ、耐えられ、ない)
体の痛みは徐々に消えていっている。だが、心の痛みは。くうから潤に立ち向かう気概を根こそぎ削いだ。
「――くう」
「露草、さん」
「一度退くぞ。掴まれ」
くうは無言で唇を噛み、肯いた。すると露草は断りなくくうの腹に腕を回し、跳躍した。
「逃がすな! 射かけろ!」
戦巫女たちの弓が一斉にくうと露草に向いた。地上から放たれた矢の雨を、露草は難なく、もう片方の手の錫杖で弾いた。
直後、あのどろりとした空間――化物道に入った感触があって、すぐ抜けた。
気づけばくうたちは森の木々の間を飛び駆けていた。
「くっそ。妖のせいで病に罹っただ? 何でもかんでも妖のせいにしやがって。胸くそ悪ぃ」
はた、と気づく。梢から梢を跳ぶ露草の足は、確か被弾していた。見れば案の定、袴は赤い。
「ちょ、露草さん!? 血、血!」
「あん? 大丈夫だよこんくらい」
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