トワノクウ
第二十七夜 あをにあし(二)
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在を流言したという。
(あまつきは人の心の闇が妖怪化する世界だって、菖蒲先生、言った。なら本来いない妖がいてもおかしくない)
「ここら一帯は病にやられた。これでも村の生き残りから要請を受けての討伐だ。銀朱様が直参されてな」
「呪いで神社から出られないんじゃ……!」
「馬鹿言うな。呪い如きで妖退治をやめるお方じゃないんだよ。俺達の銀朱様はな」
「――あまり持ち上げるものではありませんよ。潤朱」
ぎっ、ぎっ。くうたちがいた屋根のちょうど下から、輿が厳かに運ばれてきた。
乗ってくる者は容易に想像できてしまい、くうの体は意思と無関係に震え出す。
「おい、くう」
「だい、じょ、ぶ、です。へっちゃら、へっちゃら」
「……ちっともそう見えねえから言ってんだろうが」
露草はどこからともなく錫杖を出し、潤たち神社勢力に向けて構えた。
「天座の樹妖にして狭間の森の主。噂じゃ死んだって聞いてたが」
「生憎だったな。人間如きにやられた程度で死ぬもんかよ」
いけない。露草の眠りの原因は銃弾。潤は銃使いでもある。ピストルで撃たれれば再び倒れてしまうかもしれない。
ああ啖呵を切ったものの、くうが鳳の権能を引き出せたのは一度きり。二度目の保証も自信も実はないのだ。
「やめてください、露草さん! 潤君は銃だって使えるんです!」
「当たらなきゃいい話だ。黙ってそこにいろ。お前を二度と坂守神社に渡したりしねえ」
露草はくうが坂守神社に一度囮に使われたと知っている。だから庇ってくれている。
心遣いと決意が分かってしまって、くうは二の句を継げなかった。
ここでなお露草を止めるのは、露草の厚意を踏みにじることを意味する。
潤は刀を振って血を払い、その刀身を露草に向けた。
「銀朱様、御前を汚します」
「よしなに」
露草と潤は同時に地を蹴り、己の得物をふり抜いた。
錫杖と刀がぶつかり合う。
露草の錫杖はどんな仕様か、潤の刀を受けても斬れず、立派に鍔迫り合いを果たしている。
両者は一度離れ、再び得物を交えた。
一対一、武器を思い思いにぶつけ合う。激突し、拮抗するだけのものが、介在する余地を感じさせない。だからだろう、くうだけでなく、坂守神社勢も動かない。妖側のくうも、妖祓いたる神社勢も、今やまとめて余人≠ネのだ。
(ここで仮に露草さんか潤君、どちらかが死んだら?)
くうは戦いとは無関係の部分に思いを致す。
(露草さんは天座で狭間の森の主、潤君は坂守神社のナンバー2。どちらがどちらを殺しても人と妖を巡る事態が大きく動く)
重大なお節介を中断させたのは、一発の銃声だった。
「露草さんっ!」
潤が持つピストルの銃口か
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