トワノクウ
第二十七夜 あをにあし(一)
[3/3]
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
平八さんが、あんなことになってもまだ繋がってるみたいに、残るものがあるから。たくさん犠牲にしても、全部なくならない限り、がんばってもいいですよね」
たくさんすれ違って、分かり合えなくて、つらいことばかりでも。たったひとつでも、か細くつながった縁が誰かの力になるなら、ただの夢物語だと笑われても、俺はそんな夢を選びたいんだ
あまたの犠牲と引き換えに、尊くか細い縁をわずかばかり残すのだと。
白い少女は陽だまりに溶けるように笑った。
「お前、馬鹿だろ」
「自覚してます」
(そんなやり方じゃ、切り捨てた大多数から恨まれるだけなのに。現に鴇だって、今様を救うために切り捨てた奴らから恨みを買って、惚れた女を攫われた)
それでも彼女は師と――六合鴇時と同じ道を往くのだ。
「いいんじゃねえの」
「ふえ?」
「やってみろよ」
「っ――はい!」
かつてその道を往った鴇時の想いを、露草たちは裏切った。やはり当然、人と妖の間で情が交わせるなど夢物語なのだと。化物道での幾重もの試練を超えてきたにも関わらず。帝天との対決を控えた土壇場で。夜行に踊らされて、露呈した。
同じ轍は踏まない。鴇時本人はおらずとも、鴇時と志を同じくする彼の教え子がいる。彼女にはあの無様を見せない。
(だからお前も、鴇が辿り着けなかったものを見せてくれ)
代償行為だと分かっていても、祈らずにはおれなかった。
そんな殊勝な気分でいた露草の、鼻を、血臭が突いた。
Continue…
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ