トワノクウ
第二十六夜 芹摘み、露分け衣 (二)
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た。
村人の要求に、露草は――従わなかった。
武器を取って、歩いて来る。花色の目に、慈悲はなかった。
あっというまに始まって終わった殲滅を見て、くうは歯の根がかみ合わないほど震えていた。
周りに転がるのは、露草によって一撃で急所を穿たれ、絶命した村人たちの死体。
妖は殺ししかしない、と菖蒲は言った。逆に言えば、妖とて人を殺すのだ。
血肉は妖に穢れとなる。逆に言えば、それらに触れずに殺害できる妖が人間と殺し合ってきた歴史があるのだ。
(露草さんが人間を殺した……妖祓いでも何でもないただの村人を)
人を殺して何とも思わない人など大勢いる。だが、今の露草はそれとは異なる次元で村人を殺していた。
許された、相手への絶対的な、敵意。
ざっ。露草がこちらを向いた。くうは肩を跳ねさせる。露草はそんなくうの様子に首を傾げ、こちらに歩み寄ってくる。
露草の錫杖の刃が頭上に向けられた瞬間、くうは本能のまま叫んでいた。
「いやぁ!!」
しゃきん! 高い音がして、腕が重くなり、地面に落ちた。くうはその場に両手を突いて俯いていた。
すると、露草の手が頭に置かれる感触があり、これにも悲鳴が出かけた。
「安心しろ。もうお前を傷つける奴はいなくなった」
顔を上げる。露草はすぐ前にしゃがんでいた。くうをまっすぐ見つめる花色の目。凶暴さも悪意もなく、ただ、まっすぐ。
「あ、あり、がとう、ござい、ます」
それっきりくうは露草から顔を背けた。
Continue…
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