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トワノクウ
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第二十六夜 芹摘み、露分け衣 (二)
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られていた。
 痛む頭を巡らせる。――いた。例の村人たちだ。何やら揉めているのが聴こえる。

(私を人質に芹ちゃんと交換するつもりですか。そう決めたはいいけど誰がそれを言いに菖蒲先生たちのとこに行くかで揉めてる)

 辺りを見回し、位置確認。ここはどこかの森の中だ。木々が生い茂って鬱蒼としている。学校の裏山か、あるいは長い階段を降りて別の山へ逃げ込んだか。

 自分の状況を確認。座った状態で、蔓で両手をぐるぐる巻きにされている。鳳の力を使えば逃げ出せないことはない。

(もうここで翼出して脅したほうが速い気がしてきましたが、人間相手ですし、やめといてあげましょう。うん。となるともっかい説得コマンドですがどこから攻めればいいか……)

 その時、近くの茂みが大きな音を立てて割れた。

「露草さんっ」

 まさか彼が助けに来るとは思わなかった。メンバーを考えれば確かに露草が妥当だが、まず助けが来るという事態を想定していなかった。

 村人たちも狼狽していたが、怖い目を見て交渉に行かずにすんで安心したのか、一斉に口を開いた。

「あ、あの娘っ子さ返せ! でねと、こいつがどうなってもいいのか!」

 縛られた手を引っ張られ、蔓によって手首に擦り傷が出来た。小さな痛みに顔を歪めた。

「お前ら、どうしてそこまで芹――あの異人娘に拘るんだ」

 露草の声は静かだ。その静けさが逆に、くうをぞっとさせた。

「あの娘がおらんなってから村はおかしくなっていっただ! 米も取れんし川が涸れただ」
「最後は山津波で家も田もみーんな流れてしもうた。もう村はねえ。おらたちが最後の生き残りだ」
「みんなあの娘っ子のせいだ! あの娘がお役目捨てて逃げよったのが悪いだ!」

 めまいがした。
 重なった不運を全て芹に押しつけて、自分たちは被害者だと嘯き、それが無知蒙昧と気づきもしない。挙句、ただ芹に責任をなすりつけるために、故郷を捨ててきた。その気概があれば村の再興とてできただろうに。

「それがてめえらの言い分か」

 露草は近くの木の枝を折ると、それを錫杖に変じさせた。殺意が迸っている。臨戦態勢だ。

「やめてください!!」

 くうはとっさに叫んだ。

「庇うのか」
「違います! こんな人達、露草さんの手にかかる価値もありません! だからやめてください!」

 露草は妖だが、平八と友達をするくらいには人間寄りだ。ここで露草が村人を手にかければ、傷つきはせずとも蟠りは残る。

(そんなのいや。せっかく人と妖でも友達でいられるって希望を見たばかりなのに、私のせいで壊れるなんていやよ)

「黙れ! ええからあの娘っ子さ返せ!」

 村人の一人が棒切れでくうの頭を叩いた。視界が回って思考が乱れ
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