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トワノクウ
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第二十六夜 芹摘み、露分け衣 (二)
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説明してくれた。

「ありがちな風習で、芹の村では村人から選び出した一つの血統を選んで奉り上げることで信仰としたのです。その奉られるお役目を当代で負ったのが芹でした。芹が理解していたか分かりませんが、芹はその役目を捨てて村から逃げ出し、江戸に来ました」

 続きは芹を膝に抱え上げた平八が答えた。

「そこを俺が拾ったんだ。んで、江戸でも追われて、逃げて来て、今に至ると」
「え、江戸まで追っかけてきたですか!? しつこいですね!」

 執念とは恐ろしい。それとも芹の「お役目」はそれほど村人にとって重く、ただならないものなのか。

「No! Io non voglio andare!」
「落ち着けよ、芹。誰もお前を追い出すなんてしねえから」

 言語は異なれど、想い合っていれば意思は通じるのか。芹は涙目で平八を見上げ、彼の胸に飛びついた。離さないで、とでも言うように。

「――菖蒲先生。外にいるのがその村の人達なんですよね」
「ええ。芹を出すまで帰らないと居座っています」

 くうはすっくと立ち上がった。

「追い返して来ます。二度と芹ちゃんを返せなんて言えないくらい、こてんぱんに。任せてください。これでも私、説得とか得意なんですよ?」

 こればかりは父母譲りの口達者。現実の篠ノ女空のスキルだ。
 くうはにっこり笑って和室を出た。

 誰もいない木造の廊下は、学童がいないだけでひんやりと暗い。その廊下を抜けて玄関を出れば、対照的な夏の太陽の眩しさ。

 校庭の隅で話し合っている男たちを認め、くうは彼らに歩み寄った。






「こんにちは」

 男たちが飛び上がらんばかりに驚いた。

(そりゃあ髪白くて西洋ドレスの女なんかに声かけられたら、私でもびっくりするしねえ)

 男たちのくうを見る目には怪しさと恐ろしさが等分に含まれていた。

「あ、大丈夫ですよ。日本語分かりますから。異人さんとかじゃないですよ」

 これが親しい相手であれば緊張で言葉はつっかえるが、一面識の人間が相手ならばすらすら言葉を紡げる。今後会うことがないのだから。

「先生から聞きました。貴方達、ここにいる異人さんの娘さんを迎えに来たんですって? あの子にまた嫌なこと押しつけるために」
「ひでぇことなもんか! 大事なお役目だ!」
「そのお役目があの子にとっては辛いことなんでしょう。そんなことも分からないんですか? 酷い大人もいたものです。残念ですが、そんな大人にあの子を渡す気は――」

 その時、ばき、と。後頭部にひどい痛みが起こった。殴られたのだ。
 くうは意識を失って倒れ伏した。

 ………

 ……

 …

 次にくうが意識を取り戻した時、くうは両手を木に縛りつけ
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