十章 自由への本能
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うに牙を剥き出し、涎を垂らす口のみが人のそれだと判断できなくなっていた。
撃たれた背も再生すると同時に膨張し、両の肩甲骨あたりから長い触手がその身を激しく動かしながら猛スピードで生えてきた。
『はっ、最早化物同然だな!』
監視員の大国人は汚物を見るかのような目で見下し、嗤う。
化物はその背から生えた触手を目にも見えぬ速さで周囲を薙ぎ払い、何人もの兵の身体が切断される。
『あああああああ』
胴体を斬られた兵は即死し、腕や脚といった体の一部を切断された兵は床で転がり、叫び声を上げる。
『くそ! 剣みたいだあの触手!』
『あれをどうにかしねぇと!』
だが、化物の猛攻は止まらない。その隆起した腕に掴まれた兵はあっさりと投げ飛ばされ、二階のステンドガラスを打ち破る。
だが、ひとりの兵が撃った銃弾が背中の触手に当たり、パァンと弾けた。化物は悶える。
『今の内だ!』
隙を狙った兵は背に担いであったチェーンソーのようなものを取り出し、ヴィィィと高速で無数の刃を回転させながら化物へと駈ける。
だが、それも呆気なく、もう片方の触手によって頭部をぶすりと刺され、貫通する。それを刺したままぶん投げ、壁に勢いよく衝突し、床に落ちる。
『接近戦はダメだ! 遠くから撃ち続けろ!』
兵は距離を保ち、撃つ。だが、いくらその身体を銃弾で壊そうとも、すぐさま再生し、立ち上がる。
「アアアアアアアアアア」
甲高い、しかし濁りのある獣の声。悍ましく、その場の人間は身震いをする。
『とりあえず、遠くからなら大丈夫だ。脚を撃ち続けて、触手に気を付ければ問題な―――』
ぐじゅ、と潰れた音が鈍く周囲の兵の耳にこびりつく。
今話していた兵の顔が食い潰されていた。
顔面を食ったその口のような筋組織の塊の根を辿ると、化物の口から出て来たものだった。
『う、うぁあああああああああ』
ドォン! とその口から生えた触手を撃ち、ドパァンと肉塊を撒き散らす。
「ヴォァアアアアアアアアアアアア」
『口からも触手……しかも牙付き』
『……はは、ゾンビ映画のワンシーンを思い出す』
『冗談じゃねぇ、とりあえず油断はできねぇぞ』
すると、化物は四肢の筋肉を隆起させ、地面を振動させるほど強く蹴り、遠距離にいる兵を殴り潰した。
『ぎゃあああああああ』
『くそ! なんで死なねぇんだよ!』
『う、撃て! とにかく撃べがッ!』
神聖な教会は真っ赤な血肉で赤黒く染まる。反響する悲鳴と怒号。そこはあまりにも無残で、醜かった。
『……まったく、使えない奴等ばかりだ。狂人一人さえ捕まえられないのか』
けがわらしいもの見せやがって、とその大国人は舌打ちし、金の装飾がなされた拳銃から銃弾を、入り口から撃ち放つ。
それは化物の脳の頭頂部のような顔に命中し
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