十章 自由への本能
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がぶつかる。
「……い……や……」
折角生きながらえたのに。折角救ってもらえた命なのに。
それを無駄にしたくない。
(イノは……イノは何やってんだよ!)
心の中で必死にそいつの名前を叫ぶ。だが、そんなことではいつまでたっても伝わらない。追い詰められる恐怖で声が出なくなっていた。
「……待っている時間も無駄だ。捕まえろ」
その大国人はつまらなさそうに命令した途端、十数人もの兵が教会の中へ突撃してくる。
「くっ、来るな! 来るなぁあああああああ」
だが、抵抗しながらもあっさりと捕まってしまう。自分の非力さを憐れんだ。
『確保しました』
ガチャンと手錠をつけられる。同時に背中辺りに注射で刺されたような痛みが走る。
「うぁ……」
ガクンと膝が抜ける。鎮静剤のようだ。
『よし、連れていけ』
大国の言語でその男は冷たく言い放った。
足を引きずられながら、外へと運ばれていく。
終わっていく。
ここで、自分というひとつの生涯が終わっていく。
思い返すことはない。みんなには悪いが、思い残すことはない。
後悔はしていない。
こんな運命を憎んではいない。
ただ、生きたい。
逝きたくない。
死にたくない。
生きたいんだ。
一瞬一瞬を。
やっぱり生きていきたい。
どんなに迷惑をかけても。
―――生きたい。
「……ぁぁぁ……」
脚に力が入る。抵抗のなかった体がまるで鎖が解き放れたかのように自由になる。
そして、その自由を
『―――っ?』
現実へと変える。
『なんだ!?』
連行していた3人の大国兵は宙を舞っていた。
捕まっていた罪人の手錠はひしゃげた形で床に転がっていた。
罪人の顔は、最早人間としての理性を失っていた。
目は白濁に染まり、零れる涙の様に血を流していた。腕や顔の血管がビキビキと張っており、筋肉の筋が露わになる。張り裂けそうなほど隆起するあまり、所々から血が噴出し、服を赤く滲ませ、身体を伝う。
「ァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
『チッ、とうとう壊れたか』
さっきまで嘲笑していた大国人の表情が歪む。
『今すぐ捕獲しろ!』
怒鳴るかのように声を荒げ、同時にすべての兵が教会の中へと入る。
「ヴァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
何人もの兵が一斉に銃を放つ。悉く被弾し、血飛沫を上げる。
だが、ソレは怯みさえしない。
『麻酔銃が効かないのか!?』
『とりあえず撃ち続けろ!』
すると、銃によって腹部に開いた幾つかの赤い穴から未発達の人の手が生えてくる。同時に、顔面の血管が更に膨張し、大樹の根のように、人の脳のように張り、目を覆うほどにまで腫れあがった。獣のよ
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