九章 発症と処理
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初にいっておきますけど、処置が終わるまで天井見上げて目を瞑った方がいいと思います。ミカドさんの今の状態だと精神が崩壊しきって廃人になると断言できます」
「見たらダメってことか」
当然、自分から出てくる死骸なんざ死んでも見たくない。好奇心で気になる感情もないわけではないが、廃人になると断言された以上、私は言われたとおりにする。
「たぶん違和感や痛みが出ると思いますが、まぁ出産する気分でいけば気分も大丈夫です」
「俺、一応男なんだけど……」
「体は女性です。意外と大変なもんですよ出産って」
そんなことを言いながらなんの前触れもなく
「えいっ」
ずぶりと指を押し込んだ。
「―――っ!!!」
体感したことない感覚と痛みの不意打ちに全身が驚く。痛みのあまりどちらの方に挿しているのかわからない。
「普通ここまで痛がりませんよ。妊婦さんの方がまだマシですね」
自分の意志が直結してるかのように、二本の指を入れているイノは淡々と解説する。
その指先から根でも張っているのか、一瞬だけの異物感がその指から体中へと伝わっていき、すぐにその違和感はなくなった。痛みも少し和らいだ。
「ちょっと麻痺させました。これは流石に人でも耐えられませんね」
独り言のように分析し続ける。痛みが和らいだとはいえ、こちらにはそれなりの余裕はなかった。
「まずは一塊」
と言ってすぐにどぼぼとなにかの液体と固体が混じったようなものが便器の中の水溜まりに着水する。
陰部から出てきたのは真っ赤に濁った何か。その色は血に等しく、塊となっているのは形成しかけた臓器。さらには、その大量の赤い排泄物には数ミリから数センチに及ぶ胎児の手足や身体が何人分も混じっていた。バラバラになったそれは血で染まっており、流産した未発達の胎児を思わせる。
赤い液体はよく見ると点々と小さい赤蟲や赤蛆が集まってできたもので、その中には十数匹ほど格段に大きい一センチほどの頭部の丸い魚のような個体が活発に水の中を泳いでいた。
当然、そんな見るに堪えないものを排出したミカドは知る由もない。
「気分はいいですか?」
「気分どころじゃないって……」
「まだあるので頑張ってください」
「……うぅ」
ミカドは涙目になる。
「生きるのって大変なんですよ」
もっともだとミカドは思った。
「よっ」
今度は肛門から濃い緑青の液体と共に、赤黒く、ところどころ青い血管が張った太長いものを、芋を掘り取るかのように抜き取る。ぼちゃんと便所の中に入れる。
「うわ、一回死なせたのにまだ生きてる」
「え、生きてんの?」
「あ、目を瞑って下さいね。なんかさっき大量の卵をまとめて殺ったんですけど、後から生まれた細胞によってそれが一塊に合体しちゃってひとつの大きな命に育んだみたいな
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