八章 灰空の下を駆ける
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り、罪悪感と申し訳なさでいっぱいになっている眼を逸らした友人の姿が。他の人も同様だった。
ははは、権力とは恐ろしいものだ。やはり強大な力の前では従うしかないのだ。
職場の奥から他の人とは顔立ちと目の色が異なる長身の人が出てくる。大国人のようだが、立派なスーツらしきものを着ているのでこの中では一番偉い方なのだろう。
「いやはや、自分からきてくれるとは何ともありがたい。自首してくれた君に感謝するよ」
この国の言語を巧みに話し、その人物は皮肉を言うが、私は沈黙を続けた。
「しかし、考えてもみたまえ。新資源とはいえ、栽培しているその一部が遺伝子崩壊した程度で大事な奴れ……いや、職員を連れて行くわけがなかろう」
「……」
そうだ、冷静に考えてみれば罠丸出しじゃないか。自分の今の立場を考えたら分かることだろ。
「その白濁しかけた眼は、きっと何故自分が被曝し、その未完成の人間兵器から異質な身体へ変異していることを我々が知っているのかと訴えかけているようだね」
それではお答えしよう、と楽しそうに大国人は語る。
「君を手術したある医者から監視役所へ報告したのだよ。限られた命を不自由な病院で無駄に過ごさせるのも可哀想だったから、独断で君を自由にさせたが、暴走してしまっては大変だと後々思ったとのことだ。あぁそういえば、今さっき連絡が入ったんだが、君の自宅から遺体が発見されたそうだ。それ以前に家中見たことのない奇妙な蛆が大量に繁殖していたから部屋ごと焼却しておいたよ。すまないことをしてしまったね。いや」
もう帰る場所などないか、とその異国人は嘲笑する。
(……とうとうあの医者まで裏切ったか)
だがそれは国で被害が出ないかという心配の上での行動だ。最初から私を騙すつもりはなかったと思う。平等的に優しい医者だ。
「さて、君一人の命でこの会社のみんなが助かるわけだが、どうだね、なんだか国民の為に犠牲になる英雄にでもなった気分だと思わないかね」
「……」
「黙ったままか。まぁ良い。命を乞い、泣き叫ぶよりは十分にマシだ。連れていけ」
私を抑えていた2人の軍人は無言のまま私を立ち上げ、前へ進めと言わんばかりに背中を強く押した。
だが、後ろから荒々しい物音が静寂な空気を打ち消した。私が振り返った時には、
「うぉりゃあああああああああああああああああ」
ふたりの友人が軍人を押し倒していた。
「連れて行かせるかよ!」
ひとりは叫ぶ。そして手に持った金属棒を軍人顔面に殴りつける。
ほかの社員もそれにつられるかのように加勢しようとしたときだった。
―――――ドォンドォン
乾いた銃声が響く。まるで時を止めたかのように場は静止した。
「……っ、嘘だろ……おい」
私はとうとう声を漏らした。
「はぁ……
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