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翅の無い羽虫
七章 コーリングコール
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して(さなぎ)みたいに一回リセットするか。あ、いちばんいいのは共生することですかね、拒絶しなければ進行は止まるかもしれないですよ」
「……何の根拠があるんだよ」
 すると、イノは意外そうな顔をする。
「根拠って要るんですか?」
「なかったらどうしようもないだろ」
「ふーん」
 特に気にする様子はなく、またお腹が空いたのか、再びイノの腹の虫が鳴り、ぐでーっとテーブルに項垂れる。
(真面目にやってくれないかなぁホントに)
 こっちは死ぬかどうかの瀬戸際なのに。やはり他人事なのか。
(いや、焦っちゃダメだな。冷静にならないと)
「―――ミカドさん」
 少し大きめの声でイノに呼ばれた。何回か呼びかけていたようだ。
「どうした?」
「電話鳴ってますよ」
「え?」
 ポケットから携帯端末を取り出すと、確かに画面にはコーリング表示されていた。
(セイマからか……?)
 そういえば今日出勤すると言っておいて無断欠席してしまったんだった。時間は8時半。8時までに出勤しなければならなかったので完璧遅刻だった。だが、そういう余裕がない程の事態にあっているから仕方ない。
 私は通話ボタンをタッチする。
「セイマ、ええと、ごめんな、無断欠席してしまって」
 優しげに言ったが、セイマは怒鳴り散らすかのような荒げた声をモニター越しで上げる。
『ミカド! 今どこにいる!』
「え? ええと……」
『いいから今すぐ会社に来い! 大変なことが起きた!』
「た、大変なことって……?」
 恐る恐る訊くが、彼の口から放たれた言葉はあまりにも受け止めきれなかった。
『数日前のあの遺伝子崩壊(ジーンコラプス)が原因で新資源栽培に関係する職員が「選抜者」になってしまったんだよ!』
 先は暗くなるばかり。

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