七章 コーリングコール
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よかった。それよりも死のカウントダウンが迫ってきている私がどうやったら助かるのか。それが重要だった。
私はとりあえず小声でこれまで起きた事情を話す。
「それってすごいですねー。DNAちょっと崩しただけで全身卵嚢の巣窟になるなんて相当ですね」
「他人事みたいに言わないでほしいし、その言い回しは精神的にきついからやめてほしい」
今この瞬間でも私の細胞は変化し、結合され、新しい生命体が生まれ続け、この体内に溜まっているのかと思うと吐き気がしてきたので自分用に買った水のペットボトルに口をつける。
「理性を無くして暴走したあたり、やっぱり時間の問題ですね。いつ暴れてもおかしくないですよ」
直視でそんなことを言われては疑いようもなくなる。悪寒が走った。
「助かる方法はあるの?」
「正直ないです」
「……は?」
今何て言った?
即答して何言った?
「ないです。さっぱりわかりません」
「……ふざけんじゃねぇぞおい!」
ガタン! とテーブルを思い切り拳で叩く。周りにした数人の視線が一気にこちらを向く。
だが、血が上っている私は気づく余地もない。
「ええと、一回落ち着いてください。一緒に助かる方法探すって言っただけで、別に助かる方法を知ってるわけではありませんよ」
イノは平然とした、きょとんとした表情で言った。こっちが苛立っているのが恥ずかしいぐらいに。
考えてみれば、確かにそういっていた。すると、自分の思い違いか。恥ずかしさを越え、さらに苛立ちを覚える。
「普段のミカドさんならそんなことありませんのに。ミカドさんらしくないですね」
初対面のお前が言う台詞じゃないだろ。
「それだけ進行してるんですね」
「…………」
「体内に浸透した放射線除去は宛になりませんね。既に手遅れですし。それも全身浴びてるから移植は……どうやってするんですかね」
「……知るかよそんな事……」
呑気なこいつに対し私は呟くように口にする。死への進行に焦りと無謀さを覚える。
「イノはさ、世界中旅してんでしょ? だったらいろんな病気の治療法とか知ってるはずだと思うけど」
「旅人がみんな医者やってるわけじゃないですよ。あ、ちなみにミカドさんの症状は世界史上初です。やりましたね」
自分にとって危険な事態だというのにこいつは。むきになる気さえ起きない。
「ミカドさん、病は気からですよ。死ぬかもしれないという想定だけでそんな落ち込んだらすぐ死にますね」
「……ズバズバ言いすぎだ」
現実逃避しているのがよくわかる。でもそうしないと気が持たない。人間とは脆いものだと哲学者みたいなことを考える。
「ズバッと言っちゃえば、その壊れて配列の変わった遺伝子を元に戻せばいいんですよ。それか壊れる身体を寧ろ壊して、まぁ自死作用を利用
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