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翅の無い羽虫
七章 コーリングコール
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と心の中で叫んだ。()められたと思ったが、その子がテーブルの上に出してきた幾つかの硬貨と数枚のお札を見て、その感情は無くなった。
「なんでかここでは使えないんですよー。使えないってわかった時困っちゃいましたね」
 お気楽に言うこの子の余裕さに別の意味で驚いた。まぁそれは置いておくが。
「これって別の国のお金じゃない。君どこからやってきたのよ」
「大国って呼ばれてるとこです。確かこの国から海を渡ってずっと(みぎがわ)に行けば着くところだったと思います」
「……そこって、ここを植民地にしているあの国?」
「らしいですよー」のほほんと和みある微笑みを向ける。
 唖然とした私は口をぽかんと開けたままその子を見る。最早驚きの声すら出ない。
「……おまえ何者だよ」つい素の自分を曝け出してしまう。
「『イノ』っていいます」
その子は質問の意味を取り違えたのか、自己紹介をする。だが、そういえばまだ名前聞いてなかったのでそれで良しとするか。
(『イノ』、ねぇ……どこの国の子なんだろ)
 私はそんなことを考えながらも冷静さを戻し、女性口調に変えて質問をする。
「あー、えっと、イノは普段何をやっているの?」
 その子は―――イノは、純粋に思える赤い瞳で私を見ながら言った。
「旅人ですかね」
「旅人?」
 この時代に旅とは、よくやったもんだと私は感心する。というのも、今は世界のあちこちで抗争や紛争が起きている国が多い。それに全く関与していない平和ボケした国も少なくはないが、世界を旅する以上、かなりの危険さが伴わってくる。
「はい、自由にぶらぶらといろんなとこ行ってます」
 それはある意味彷徨っているとも読み取れますけどと、私は思った。
「何か目的でもあるの? 旅することに」
 イノは水のペットボトルに口をつけ、一呼吸置かせる。
「特にないんですけど、いろんな場所を見てみたいっていえばそうなりますね」
「へぇーそうなんだ」
 それならネット検索でいろんな国の景色の画像や動画で見れば早いのではないかと思うが、それとこれとでは違うのか。それに返答が曖昧だからはっきりしてほしいと思ったりする。
「直接味うのがいいんですよ。メディアを通してみるより、やっぱりこの目で見てみたいんですよね」
 私の心の中を読みとって答えたかのような返答だったので少しドキリとした。本当に読み取っていないよなと懸念する。
「目的や夢を目指して旅する人は多いですけど、僕は実際よくわかんないんで旅する意味は考えてないですね」
 イノはそんなことを言ってにゃははと笑う。中性的な声と顔が可愛らしくも感じる。
「……まぁイノのこともわかったことだし、そろそろ本題に入らない?」
「わかりましたー」
 そう、気になってはいたのだが、正直この子の事情なんてどうでも
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