六章 出会い
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こうもあっさりと正体を突きとめられた。
何者なんだこいつは。なんでわかったんだ。
そう考えることしかできなかった。
親しい同僚や私を手術した医者以外では女性として振る舞っていた私はつい中身の男性を出してしまう。
「えーと、なんででしょうね。正直わからないです」
からかっているのかと思ったが、その表情には純粋さがあり、とても嘘とかついている様には見えなかった。信じられないが本当にわかってないのか。
(…………)
それに、余命があと2日と断言したのも気になる。もって三週間と言ってくれた医者の余計な優しさが頭を掠める。
「ミカドさん」
若者が声をかける。その声には温かみがあった。
「神様にお願いする程、涙を流す程、生きたいのですか?」
「…………」
私は眼を逸らし、頷く。それを言われただけで、目にじわりとくる。
「わかりました」
そして笑顔を向ける。その笑顔は輝いて見えた。
「わかったって……?」
「力になるかわかりませんが、ミカドさんが人として生きていける術を一緒に探します」
「……え」
その言葉の優しさ以前に、助かる方法はあるのかと疑問が浮かんだ。だが、ひとりで彷徨ってもただ死を迎えるだけ。それなら、この一筋の糸を掴み取らなければならない。
「……本当に?」
「本当ですよ」
その言葉が私の壊れかけた心を救ってくれたのかもしれない。莫大な恐怖感から微かな安堵が暗い心の底から湧いた。
「あ、ありが」「でも」
言葉を遮られる。だが本人はわざとそうしたわけではないようだ。
「でも……?」
私は恐らくとんでもない条件を要求されると予測していた。
「その前に、何か食べさせてくれませんか。お腹へって死にそうです」
だがそれは、あまりにもちっぽけな条件だった。
私は少しだけ笑う。その表情は今まで出したことがなかったかもしれないほど、その笑みは優しいものだっただろう。
私は偽りの「女性」としてではなく、中身の「男性」として話す。
「わかった、食べきれなくなるまでたくさん食べさせてやる」
紅い眼をした白髪の若者はお腹を鳴らしながらこれ以上ないくらい嬉しそうな顔をした。
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