四章 静かな宣告
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いつ現れてもおかしくはない。常に危険な状態だ」
「そう、ですか……」
白い空間が静寂に包まれる。医者はこの場の重しを軽くするため、優しげに語るように話しかける。
「ミカド君」
「……なんでしょう……」
「君は、神様を信じるかい?」
「……いえ、俺は宗教に興味がないので……」
「そうか」と医者は腕時計で時刻を確認し、再び話し始める。
「折角というのもなんだが、一度教会へ寄ってお祈りでもしてみるといい。まぁただの気休め程度にしかならないと思うが」
「……考えておきます」
「君にとって神様を、いや、奇跡なんて根拠の無いものなんぞ信じないと思うが、信じない限り、受け入れない限り、そういったものは訪れない。まぁ、検討してみてくれ」
「……わかりました。ありがとうございます」
「では、私は失礼するよ。ああ、明日、君は退院する予定だ。しっかり体を休めておきなさい」
老医師は会釈をし、部屋を出る。しん、と再び閑静の空間と化す。
「……」
もって一か月。それが私に与えられた余命。いつ死んでもおかしくない。絶望的であることには間違いないが、どうも実感が湧かなかった。いや、感情を抑えていたのかもしれない。
そうでなかったら、何故こんなにも、こんなにも……
「なんで涙が出てくるんだよ……っ!」
その病室からは透き通るような、しかし悲しそうな女性の声が微かに漏れていた。
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