四章 静かな宣告
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体内で発生しているのだよ」
「それは、最後にどうなるのですか?」
「細胞はまったく別の生命体となり、オカルトにいえば君は理性を持たない、生きているだけの化物になる。そして、次第に衰弱していき、組織が破壊され、どろどろの肉塊となるかもしれない」
「……死ぬんですか……?」
「恐ろしいことに、そんな状態になっても、君は生きてるよ。感覚は無いだろうけど」
「……それって死んだも同然じゃないですか」
「そうだね。被曝した時点で君は死んだも同然だ」
冷酷に言った老医師の目に迷いはない。本当なのだろう。
「……それに」
「それに?」
「普通の人体ならともかく、君の身体は被験体の肉体だ。組織が人と異なるそれが被曝して変異してしまったら無闇に治療もできない。いや、方法が見つからないのだよ」
「……もしかして、被験体っていうのは……戦争と関係してますか?」
「その通りだよ。さすがミカド君だ」
静かに医者は言った。重々しく言うその様子は懺悔を告げる罪人のように見える。
「対戦争用に開発されている人間兵器、とでもいえば分かりやすいだろう。異常な身体能力に加え、その破壊力は重火器にも匹敵するらしい。再生力と耐性力にも優れ、なかなか死なないという。まさに兵器そのものと言ってもいい」
だが、と医者は付け加える。
「当然、手術時に拒絶反応が見られ、山のように死人は出た。まだ助かる見込みのある廃人の一部は私の病院に運ばれてきた。彼女もその一人だったが、既に手遅れで、脳組織が破壊され、精神が崩れていた。肉体は未完成のまま脳死に至り、彼女の人生はそこで終わったよ」
「……そこで、死に掛けの俺が運ばれてきたと」
「そうだ。だが、君が被曝した以上、その兵器と化した肉体がどう変異するのか。いや、もう既に変異してしまっている」
「なんとかならないのですか?」
「……君に付着した放射線は何とか除去できたが、細胞にまで浸透してしまったものはどうにもできなかったよ。急速に縮んでいく寿命を抑えただけだ。変異の進行が止まったわけではない」
「ま、また移植とかして治りませんか? 全身移植を可能とした先生ならどうにかできるはず……」
「放射線は全身にまで行き渡っている。君の脳髄もしっかりとね」
「そ、それじゃあ……」
「ミカド君」
医者は私の話を遮る。白黒つけるように。これ以上の抵抗を無くすように。
医者は告げる。
「残念だが、医者としてこれ以上はどうにもできない。なんとか治療法を探してみるが、期待はしない方がいい。申し訳ないが、覚悟をした方がいいだろう」
「…………」
「……すまないな、私も未熟な人間なのだ。責めたって構わないさ」
「……いえ、大丈夫です。……あの、余命はどのくらいなんですか」
「予測としては……もって三週間だろう。だが症状は
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