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翅の無い羽虫
四章 静かな宣告
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っちゃってくれてるんですか!」
「おっとっと、放射線除去してやった恩人に対する言葉かい?」
「いやそれは本当に感謝してますけど、なんで俺を女性の身体に移植したんですか!」
「だってそうしなかったら君ぐっちゃぐちゃのねっちょねちょで死んでたんだもん。移植できる献体があれしかなかったんだもん」
「その年で駄々っ子みたいに言わないでください。あと本人の意思で提供してないでしょう。献体の意味間違ってますよ」
「それよりも私は命の恩人なんだからそれなりのご奉仕は頂か」「警察呼びますよ」
 白衣を着たフサフサ白髪の老人はしょぼんとし、ベッドの傍のパイプ椅子に腰を掛ける。
「そんなに落ち込むことですか」
「男は如何なる時も健全且つ思春期だ」「渋い声で決めても内容ただのエロおやじですよ」
「……ま、男である君を女性の身体に移植してしまったのは申し訳なく思う」
「人の身体をじろじろ見て言うセリフですかそれ」
「鏡で自分の姿を見て血圧上昇するのも無理はないが、アレはほどほどにな」「何をですか」
 その医者はバスケットに入ってあった果物ナイフを取り、親切にも果物の皮をむいてくれる。
「……ま、冗談はさておき、どうかね体の調子は。ああ、両方の意味だ」
 真面目な顔つきになればこの丸顔の老医者は結構凛々しくなる。どうでもいいことだが。
「……え、と……まぁ特にこれといったことはないですし、元気ですよ」
 私は笑って答えた。だが、さっきまでお調子者だった医者は一緒に笑ったりしなかった。
「元気だというのなら、君は異常だよ」
「え……?」
 その言葉に疑問を覚える。異常とは、どういうことか。
「君の付添いにも伝えておいたが、君は今朝、放射線を浴びている。隣国の落とした核のものだ。距離は遠かったものの、放射線は広範囲まで拡散したようだね」
「……」
「この国は深夜12時から朝方6時までの一般勤務を禁じているという法律のおかげで、爆心地以外の国民は外に出ていない為被曝せずに済んだ。君一人を除いてね」
 医者は話を続ける。私は朝の行動を思い返していた。
「まぁ君の身体がある実験によって多少なりは耐性があったようだが」
「ちょっといいですか」「なにかな?」
「この女性の身体はなんの実験をされて……亡くなられたのですか?」
「…………」
 老医師の真剣な目に僅かだが躊躇いがあった。
「まず、君の体の健康についてだ。今のところ白血病や癌といったものは見られない」
「ならよかっ―――」「だが」
 言葉を遮られる。医者は重く口を開く。
「その子の、被験体の体質が放射線に反応したようだ」
「……どういうことですか?」
「今は全細胞が弱まりきっているが、それは今だけだ。現在進行中で君の細胞は遺伝子レベルで変化している。被曝者とは異なる症状が
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