第二部 文化祭
第51話 風変わり
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ばしいばかりである。
しかし、その和人は今、いったいどこにいるのだろうか。
この森は見てくれよりもずっと深い。あまり進みすぎると、二度と戻ってこれなくなった──などという事態になりかねない。それに和人のことだ、地図すら持たずに行ってしまったのだろう。
なんとか連絡をつけようと、何度もメールを送った。しかし、未だ返事はない。
和人が返信もできない状況なのだとしたら──そう考えると、明日奈はいても立ってもいられなくなった。
*
──つけられている?
妙な気配があった。誰かの視線を感じるような──背中を走るその感覚は、どこまで行っても消えなかった。一方的に見られ続けているのもいい気分ではないので、思いきってこっちから動いてみることにした。
俺はなるべく平常心を装った声で言った。
「……おい! そこにいるのはわかっているんだ! なにが目的かは知らないが、要望があるなら話は聞く。出てきてくれないか?」
──どうだ……出てくるか?
犯罪目的で俺を追っているなら、恐らく出てはこない。仮に出てきたとしても、戦闘は避けられないだろう。
身構えていると、後ろから声がした。
「……あーあ。気づかれちゃったか」
声の質や高さからすると、女性のようだ。それも、俺との年齢差は然程なさそうな少女の、無邪気な声。
「こんにちは」
声の雰囲気からすると、敵対意思はなさそうに聞こえる。しかし、それだけで判断するわけにもいかない。俺は後ろを振り向き、言った。
「……今までに会ったことはないよな?」
立っていたのは、紫色の柔らかそうな髪に、緋色の瞳をした、俺と同じくらいの身長の少女だった。
少女はくすっと笑った。
「ふふ、どう思う?」
「……俺は見覚えないけど」
「うん、はじめましてだよ。アタシはストレア。よろしくね!」
俺の警戒を悟っているかいずか、ストレアと名乗るその少女は、人なつこそうに微笑んだ。
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