第30話 望まぬ出征
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留まることは無いだろう」
「勝てば勇退、負ければ責任を取って辞任……ということか」
「ああ。だが私が辞めた後、政治家共の思い通りに動くような人物が軍のトップに立つことだけは避けねばならんのだ。ここで貴官が短期を起こし要職から外れるとなれば、連中は嬉々として自分たちに忠実な者を代わりに据えるぞ。それも、統合参謀本部長に宇宙艦隊司令長官という地位にな」
「…………」
「幸いなことに、現時点でその地位に最も近い第一、第三、第五、第七の各艦隊司令官はそれほどの愚者じゃない。しかし、彼らは全て今回の出兵に参加するのだ。もし、大敗するようなことがあれば………」
「左遷して名誉職にでも回す……か。だが、現政権も転覆は必至だろう」
「ああ、もちろんだ。貴官は知っているか? 野党の議員たちが最近、第十四、第十五艦隊司令官と懇意にしてるのを」
「なんだと………」
第十四艦隊司令官ラムディ・エンソン中将と第十五艦隊司令官アラン・バンディーク中将たちの下へ政治家たちが足を運んでいるのはニコラスも耳にしていた。
しかし、それが与党ではなく野党の議員であったのは初耳である。
「野党の議員にとって、政権交代が起きるのは確定事項なのさ。無論、それは現政権の連中とて分かっている。だからこそ、この無謀とも言える出征を強硬に進めたのだ」
「では、此度の出征における艦隊の選定も………」
「そうだ。司令官が野党と親しい第十四、第十五艦隊に手柄をやりたくない。そんなところだろう」
囮部隊である本体に、まだ定数に届かず数の揃っていない第四、第六艦隊が含まれているのは、そういう理由であった。
「そんな下らん理由で……」
目先の危機より権力闘争。
そんな人物たちに軍の使用権を握られていると思うと、遣る瀬が無くなる。
「嫌な話はこれだけじゃないぞ。こんな現状のルフェールに嫌気を差す人間たちが出てきている。有象無象ならどうにでもなるが、一定の地位にある者ならその影響力は無視できん。で、そんな連中が何を考えると思う?」
「………クーデターか?」
「それもある。が、クーデターを起こすには軍部の協力が必須だ。私とお前が軍の掌握を出来ている限りは、その心配は無いだろう」
「では……亡命か」
「ああ、それも九王国へならカワイイものだが……問題なのは銀河帝国への亡命を考えている輩だ。帝国への亡命となれば、手土産が必要になるだろう」
手土産といっても、彼らに提供できるものは限られている。
即ち、情報である。
「今回の件、良い土産になると思わないか?」
「確かに……情報が洩れていれば厄介だな。こちらでも探ってみるが、確証が取れなければどうしようもないぞ。精々各艦隊の司令官に通達を出すぐらいだ
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