第四章 誓約の水精霊
第一話 プレイボーイ
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を呼んだ。
「何だルイズ?」
「ひこうきの中での事……覚えてる?」
ドアに背を預け天井を仰ぎ見る士郎。
「……ああ」
「シロウはわたしのこと……どう、思ってる?」
「……大切な女の子だよ」
ルイズの声は少し……震えている。
「……そう……で、それだけ」
「それだけ、とは?」
ルイズがゆっくりとベッドから立ち上がる。キシリと、ベッドが音をたてる。
「わたしは、シロウが好き」
ゆっくりと振り向くルイズ。黄昏色の光がルイズの顔を覆い、仮面のようにルイズの顔を隠す。
「シロウは?」
微かに震えていたルイズの声は、いつの間にか震えは止まり、段々と闇が広がる部屋の中に染み渡るように響く。
「俺も……好きだよ」
黄昏色の仮面が外れると、今度は暗い闇が、ルイズの顔だけでなく全身を覆い隠す。
「そう……でも、その“好き”はわたしの“好き”と同じ、なのかな……?」
闇の中から、不安気な小さな声がする。
士郎は一度強く目を瞑ると、天井を仰いでいた顔をゆっくりとルイズの気配がする方向に向けた。
「それは……分からないな」
「……分から……ない?」
食いしばった歯の隙間から漏れ出るように、妙に篭った声がルイズの口から漏れる。
「元の世界に……好きな人が……いたの?」
鼻をすする音と共に、涙混じりの声が聞こえる。士郎はドアにこつんと頭を当てると、昔を思い出すかのように目を閉じる。
「……ルイズ……俺は……お前に相応しい男じゃない……」
「え?」
士郎の言葉は、ルイズが望んだ答えではなかった。訝しげな声を上げ、戸惑った様子のルイズに構うことなく、士郎は独白のような話しを続ける。
「俺は“正義の味方”になるために、世界を回っていたと、以前言ったことがあったな。俺は世界を回る中、様々な人を救ったが……何も見返りを求めずに人を救う男は、傍からから見ていた者には、“正義の味方”なんかではなく、理解不能の狂人のように思われてな」
「シロウ?」
シロウの好きな人のことを聞こうと思ったら、別の話になっており、意味が分からなく戸惑った様子のルイズだったが、シロウの話しの聞くうちに、最近夢に出てくるあの悲しい夢が脳裏をよぎったことから、黙ってシロウの話しに耳を傾けた。
「だから、色々と煙たがられていてな、だが……たまに、手を貸してくれる人もいたんだ」
煙たがられていた? 違う? そんなものではない……そんなものではなかったはずだ……。何故かルイズは確信を持って士郎の言葉を否定する。根拠も理由も、あの不可思議な夢でしかない。しかし、ルイズの心の奥で、何かが大声を上げて言っているのだ。辛かったはずだっ! 悲しかった
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