第四章 誓約の水精霊
第一話 プレイボーイ
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ギーシュであったが、穴から吹き出すドス黒く染まった冷気を感じ、顔が青ざめていく。
モグラをしっかと掴むと、ギーシュは穴の中にいる何か(・・)を刺激しないようじりじり下がっていったが、墓穴から生者を引き込む悪霊の如き素早さで、ルイズの腕が穴から伸びたかと思うと、ギーシュの細い足首を万力の如き力で握り締め、穴に引き込んだ。
「誰が、誰に夢中だって?」
「あ、あ、あ、あ、あ、あ」
「だ、れ、が、だ、れ、に、む、ちゅ、う、だっ、て?」
「は、ひ」
「誰が誰に夢中だってぇ〜っ!!」
「つぎゃああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
穴の中に引きずり込まれたギーシュは、般若のように顔を引きつらせたルイズに問い詰められたが、余りの恐怖で口が回らず、鬼と化したルイズに襲い掛かられ、一瞬でずだぼろにされてしまった。
主人が潰されたゴキブリのように、持ち上がった足を時折ビクつかせる姿を、モグラは穴の隅で小さくなって震えて見ている。ルイズはギーシュの血で濡れた両手を、足元で痙攣しているギーシュの服で拭うと、地獄の底から響く様な恐ろし気な声で呟く。
「シロウ……わたしがこんなに悩んでるっていうのに……覚悟しなさいよ」
不幸なことに、ルイズの独白が聞こえてしまったデルフリンガーが、小さく震える声で呟く。
「ぃ、ぃやぁ……今度の“虚無”は、ブリミル・ヴァルトリの千倍は恐ろしいやね」
ある程度石を投げた相手の正体が予想できていた士郎が、恐る恐ると部屋のドアに入ると、ルイズが士郎に背を向けベッドの上に腰かけていた。部屋の中は薄暗い。もう夕方だというのに、ルイズは灯りもつけていない。暗いのはそのせいだと思うが、それだけではないと士郎は気付いていた。部屋の中に漂う、どこか覚えのある空気を感じ、寒気を感じると共に士郎の背中に嫌な汗が流れる。
「……どうしたルイズ。部屋が暗いぞ」
士郎が声を掛けるも、ルイズからの返事はない。士郎はベッドを間に挟み、振り返ることもなく背中を向けているルイズを見つめている。
さて、どうするか。士郎は、最初、ルイズが石を投げつけたことに対し注意しようと考えていたが、ルイズの様子から、声をかけるのが躊躇われていた。
ドアの前で、士郎がルイズに話しかけるのに躊躇していると、低く冷たいルイズの声が、薄暗い部屋に響いた。
「随分と遅かったじゃない。今まで、どこで何していたの?」
特段声を荒げているという訳ではなかったが、その声に潜む何かに、士郎の背中に感じる嫌な感覚は消えなかった。
「あ〜……ヴェストリの広場でシエスタと会っていた。それでだ――」
「シロウ」
「ん?」
士郎が石の件を注意しようとしたが、それを遮るようにルイズが士郎の名
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