第四章 誓約の水精霊
第一話 プレイボーイ
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そんな君が大好きだ、が……」
「だ、だが?」
「娘を泣かせたら殺す」
「りょ……了解」
恐ろしい顔でありながら、何気ないことのないことのように軽く言うシエスタの父の様子に、背筋に伝った冷や汗の冷たさを忘れられない。
だが、おかげでギリギリで我に帰れた。
だ、だがまずい……この感じは……やばいっ!!
何とかシエスタから距離を取ろうとするも、身体は勝手に? 目を瞑るシエスタに近づいていく。
「ぁっ」
シエスタの頭を、士郎がその柔らかな黒髪ごと熱く熱が篭った手のひらで掴むと、シエスタは微かに声を漏らす。驚きと歓喜、微かな怯えと悦び……様々な感情がその小さな声には篭っていた。
段々と近づいていく士郎とシエスタ。
あと少しで二人の距離がゼロになるというところで――士郎はシエスタを抱えベンチから飛び離れた。
シエスタと士郎が腰掛けていたベンチの後ろ、約十五メイル程離れた地面に、ぽっかりとあいた穴があった。その穴から、息を荒げながら顔を覗かせる少女。ピンクの髪を逆立て怒りを示すルイズである。
穴の中でルイズは地団駄を踏んでいる。穴の中、ルイズの隣には、この穴を掘った張本人? 獣? の巨大モグラのヴェルダンデと、士郎のことについて色々と聞き出すため持ち出したデルフリンガーがいた。
「なっ、何やってんのよっ!」
穴の壁に固く握り締めた拳を叩き付けながら、ルイズが唸っている。
ルイズの視線の先には、丁度士郎が座っていたベンチの上に、握り拳大の石が転がっていた。
飛んでくる石を避けるため、横に座るシエスタをお姫様抱っこしながら、ベンチから飛び離れた士郎が、ベンチに入ったヒビを、冷や汗を流しながら見つめている。士郎の腕の中では、お姫様抱っこされたシエスタが、戸惑った顔をしながらも、どこか嬉しげな表情を浮かべている。
ベンチに転がる石は、ルイズが投げたものであった。シエスタに呼び出される士郎を見て心配になったルイズは、事前にヴェルダンデにベンチの後方に穴を掘らせ、士郎達が来る前に穴に潜むと、士郎とシエスタのやり取りの一部始終をのぞき見ていたのだ。そして、士郎がシエスタにキスしようとするのを見て一瞬で血が頭に上ったルイズは、その勢いのまま、足元に落ちていた石を士郎に投げつけたのだ。
地団駄を踏むルイズに、穴の中、土壁に立て掛けられたデルフリンガーが揶揄うように声を掛ける。
「なあ、貴族の娘っ子」
「あによ。と言うかあんた、わたしの名前知ってるでしょ。名前で呼びなさい名前で」
「べっつにいいじゃねえかよ呼び方なんかぁ。んで、最近貴族様は穴を掘って使い魔を見張るのが流行りなんかい?」
「は、流行りなわけないじゃない」
「あん? だったら何で穴を掘って覗いてんだ
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