第四章 誓約の水精霊
第一話 プレイボーイ
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な肌を思わせる、柔らかく暖かそうなマフラーである。
「確かに、風防を開けると寒いからな」
試しにと士郎がそのマフラーを首に巻くと、肌触りを確かめるように頬で感触を確かめ、くすぐったそうに目を細めながらシエスタの言葉に頷く。
今は初夏であるが、空に上がると気温が一気に下がり空気が冷え込む。風防を開ければなおのことである。現代の飛行機ならともかく、このゼロ戦は離着陸の際は、頭を風防から出して下を覗き込む必要があるのだ。
マフラーには白地に、黒い毛糸で大きく文字が書かれている。アルファベットに似た雰囲気のハルケギニアの文字である。
「『シロウ』か。名前まで縫い込んでくれるなんて」
「そ、そんなに難しいものじゃないので」
はにかんだ笑顔の中に、少し誇らしげな雰囲気を感じた士郎は、ますます笑みを濃くすると優しげな目をマフラーに落とす。
「ん? 端にシエスタの名前が書かれているが、これは?」
「あ……その。ご、ごめんなさい。ちょっと縫い込んでしまいました。ご迷惑でしたか?」
おずおずと不安気な顔で見上げてくるシエスタの頭に、士郎はぽん、と手を置くと優しく撫でる。
「んぅ」
「全然。迷惑な訳がないだろ」
気持ちよさそうに目を細めるシエスタを、暖かな目で見下ろす士郎。
今まで数多くの女性と関わってきた士郎だったが、こう言う女性らしいプレゼントをもらったのはあまりなかったのであった。
時折もらうプレゼントは、曰く付きの短剣だったり、『お願いを一回聞きます』と書かれた紙切れだったり、何百万もする宝石だったり……とにかく女性らしいプレゼントというものをほとんど貰うことが少なかった。
周りにいる女性が、色々と特殊すぎることから仕方ないこととは言え、たまに女性らしいプレゼントを貰ったとしても、中に何が入れられているか、何が縫い込まれているのか分かったものじゃなく。以前プレゼントされたチョコの中に、とある薬入れらえており……あの時のことは思い出したくもない(人はそれをトラウマと言う)……。
とにかく、そんなことがあったことから、純粋な女性らしい贈り物を受け取った士郎の胸は、優しい気持ちに満たされていた。
「しかし、これを編むのは大変だっただろう」
士郎が感心したように頷くと、士郎の手の下でシエスタが上目遣いで士郎を見つめてくる。
「いいんです。あの、ですね。わたしアルビオン軍が攻めて来た時、すっごく怖かったんです。でも、戦争が終わったって聞いて、森から出てきた時……シロウさんがひこうき? から降りてきましたよね?」
士郎は頷く。
「あの時、本当にすっごく、すっごく嬉しかったんです! 本当です! だからわたし……いきなりあんなこと……」
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