第四章 誓約の水精霊
第一話 プレイボーイ
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、このまま王座を空位にしておきたい。女王になど……なりたくはない。
窓の外から、歓呼の声が聞こえる。俯いたまま顔を上げない主君をマザリーニが諭す。
「民……国が望んだ戴冠ですぞ。これからの殿下は、殿下御自身のものではありませぬ」
一つ咳をし、マザリーニは話しを続ける。
「それでは、戴冠の儀式の手順をおさらいいたしますぞ」
「王冠を冠るだけですのに、随分と手間を掛けるのですね」
「そう言うものです。権威を示すには手間が掛かるものです。ましてや始祖が与えし王権を担うことを、世界に向けて表明する儀式なのですぞ。多少の面倒も必要になるというものです」
未だ顔を上げないアンリエッタの様子に、マザリーニが小さく溜息を吐くと、続けて儀式の手順を説明しだした。
「はぁ。さて、一通り儀式が進みますと、殿下は祭壇のもとに控えた太后陛下の俄然にお進みください。始祖と神に対する誓約の辞を殿下が述べますと、御母君が殿下に王冠を被せてくださいます――」
誓約……。
儀式の手順で行う“誓約”。何も覚悟はなく、ただ言われるがままに誓約を行うのは冒涜になるのではないのかしら?
自分に女王が務まる等とても思えない……こんなことになった原因であるタルブでの勝利は自身の力でなく、経験豊かな将軍やマザリーニの指示のおかげだった。自分はただ、あの時、あの場所にいただけの何の力もないただの女でしかない。
もし……もしウェールズが生きていたとしたら、今の自分を見てどう思うだろうか? ただ周りから祭り上げられたことから女王となる自分を……。
ウェールズ。
恋というものを教えてくれた人。
自分が愛した……ただ一人の方……。
自然と唇に白い指先がのびる。
思い出すのは、ラグドリアンの湖畔で口にした誓約。あの時、気付いた時には、自分は心から溢れ出る想いに突き動かされ、知らずの内に誓約の言葉を口にした。あんなことは、きっと後にも先にも無いだろう。
のばされた指先は唇に触れることなく下ろされ、膝の上に置かれていた羊皮紙の上に落ちた。
かさりと乾いた音をたてる羊皮紙に、アンリエッタはぼんやりとした視線を向ける。
羊皮紙は報告書であった。先日アンリエッタの元まで届いた報告書である。報告書は、士郎がゼロ戦で撃墜した竜騎士を尋問した一衛士が作成したものであった。
報告書には、どんな竜であっても出せない速度で空を駆けた竜騎兵が、強力で射程距離が長い魔法攻撃で見方の龍騎士が次々と撃墜したと書かれていた。
しかし、そんな竜騎兵はトリステイン軍には存在しない。
そのことに疑問を抱いた衛士が、さらに調査を続け。そして衛士は、タルブ村でその竜騎兵の重大な情報を手に入れた。
その情報とは、どうやら竜騎兵が操ってい
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