第1話 色づいた者
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篠ノ之束には興味があるものが二つある。
一つは宇宙。
いつか自分の力で宇宙にいくのが夢だ。
だからそのためのものを創っている。
もう一つは8つ離れた今年で3歳になる弟のこと。
弟は一言で言うなら不気味だ。
この束さんに言わせるのだから相当だろう。
弟は喋らないのだ。
生まれてからずっと。
弟が声を出したのは10回もないだろう。
最後に声を聞いたのがいつだったのかもわからない。
起きる時間、寝る時間もいつも同じ時刻。
9時ちょっきりに布団に入り目を閉じる。
6時30分ちょっきりに目を開けて布団から出てくる。
流石にこれには束さんも引いた。
お父さんとお母さんも弟のことを不気味がっていて、その分束さんにとっての妹、弟にとっての姉である箒ちゃんを可愛がっていた。
だから、弟はひとり部屋に閉じこもって本を読んだり、昼寝をして過ごしたりしていた。
でも。
でもそんな弟に束さんは自分に近いものを感じた。
この束さんにだ。
だからいつも一緒にいた。
流石に小学校に連れていくことはできなかったけど、それ以外ではずっと一緒。
一緒の布団で寝て、一緒の布団で起きる。
一緒の時間に朝ごはんを食べて、一緒の時間に夜ご飯を食べる。
土日は朝から晩までずっと二人でごろごろ過ごす。
それが束さんと弟──結弦の日常だった。
でも、結弦の3歳の誕生日を機に結弦変わった。
そして、束さんは歓喜した。
ちーちゃん以外にもいたんだ!
束さんと同じ世界が見れる人が!
これでひとりぼっちじゃない。
束さんを見るすべての人から向けられる化け物を見るような目を向けない、同じ境遇に立つであろう存在。
その日、篠ノ之束はひとりの最愛を見つけた。
自分と同じ
天災と同じ
鬼才を。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
灰色だ。
また、灰色。
結局女神が言った色ずいた世界じゃなかったか……。
落胆はない。
わかっていたことだから。
心の何処かで思っていたことだから。
僕の世界は存在しないと。
また、はじまるのか。
つまらない日常。
いつもと変わらない日常。
若返ってしまった分、よけいに続く日常。
うんざりする。
顔には出さないが、心底うんざりする。
目だけを動かし、時計を見る。
針は6時30分を示していた。
とりあえず、起きるとしよう。
結弦は掛け布団をどかし、ベッドから降りる。そこでふと何かが目に映った。
白と黒じゃ無い色が。
いままで見たことがない色が。
それに
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