第1話 色づいた者
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よって束はより結弦は私と同類なのでは無いか、という思いが大きくなっていく。
「それは……うん。なぜか読めたのだ」
束の質問に答えようと口を開くが、いざ言うとなると言葉につまる。
どう説明しようかと。
結弦は束はが考えているような天才では無い。
いや、確かに天才──鬼才ではあるのだが、それはこれには関係が無い。
ただ単に記憶がなくとも魂が覚えていた。
それだけなのだから。
結弦は確かに記憶を封じられていた。
しかし、魂は浄化されずそのままこの世界に転生したのだ。
魂が浄化されなければ魂に蓄積した前世の『篠ノ之結弦』の経験が刻まれたままとなる。
人間、意識しなくとも文字を読むことができるのは魂に刻まれているから。
結弦は意識すれば記憶には残っていないため読むことができなかったであろうが、無意識の行動によってこれまで過ごして来たのだ。
それも自我が確立していないため意識することなく読めてしまう。
まぁ、自我がなければ意識のしようがないのだか。
束に説明するとなると転生のことも話さなければならなくなる。
それは果たしていって良いのだろうか。
結弦は少し考える。
女神からは話して良いともいけないとも言われていない。
ならばいってしまおうか?
そんな考えが浮かぶが口にしたのは、
なんの説明にもなっていない「なぜか読めたのだ」
という言葉だけ。
束の顔を見ると、やはり怪しんでいる。
言い直そうか。
そう思っていると、
「そっか!なぜか読めたんだ!ゆーくんもやっぱり束さんと同じで天才なんだね!」
嬉しそうな声をあげて笑顔になる。
それに結弦は首を傾げる。
なぜ喜ぶ、と。
いまのどこに喜ぶ要素があった。
結弦は束を観察する。
優しそうなおっとりとした顔を笑顔にさせて喜ぶ束。
前の世界と変わらない灰色の世界で灰色では無い初めて見た色のついた人間。
そこにふと、結弦の頭のなかに記憶が再生される。
それはこの世界に転生する前のとき。
女神が言っていた言葉。
──あなたと同じように世界をたったひとりで生きている人が。
──あなたと同じように世界に色を求めている人が。
そうか。
彼女が。
結弦は悟った。
きっと彼女は結弦と同じなのだと。
だから、あれほど喜んでいるのだと。
世界にたったひとり、自分を理解できる人間を見つけたから。
気づけば結弦はほんのわずかながら笑みを浮かべていた。
生まれて始めての笑み。
結弦は自分の口元に手を当て、確認する。
これが笑みか。
だとするならば、
これが、嬉し
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