第1話 色づいた者
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少し静かにして欲しい。いままでの記憶の閲覧をしている」
閲覧の言葉を聞いて少女は目を見開く。
閲覧なんて思い出すことに使う言葉じゃない。
でも、少しだけ結弦らしいと思う。
少女を含め結弦の家族は皆結弦のことを人形のようだと思っていた。
毎日毎日1分のズレなく本を読み、昼寝をして、ご飯を食べる。
決められたことをする人形、いやロボットのようだと。
いまも目をつぶってまったく身動きしない。
ほんと、人間らしくないなぁ
それから結弦15分ほどして目を開いた。
「閲覧終了。僕の名前は篠ノ之結弦。あなたの名前は篠ノ之束。僕の二人の姉の長女。もう一人は篠ノ之箒。僕の姉の次女。父親の名前は篠ノ之柳韻。母親の名前は篠ノ之岬。……あっているか?」
「あ、あってるけど、どうしたの今更?」
「いや、よくやく目覚めたのでな。記憶に間違いがないか確認しようと思ったのだ」
「目覚める?それってどういう意味?朝起きるって意味じゃないんだよね?」
「ん?そうか、知らないのも仕方ないか。ふむ、なんと言ったら良いか……この身体には自我が形成されていなかったのだ。それが今日、ようやく形成された。だから僕が目覚めたということだ」
自我が形成されてなかった。
それに少女──篠ノ之束は驚愕する。
自我とは月日が経つごとに形成され、1歳になる頃には形成するものだ。
生まれて3年もすれば性格など他人とは違うさまざまな変化がみられる。
しかし、自我が無いということは自分からは何もせず、ただ言われたことをこなすだけのロボットと同じ。
だが、結弦は自ら動いていた。
本を読み、昼寝をする。
自我がなければできないことだ。
何も命令されていないならその場から動かないはずだから。
そこで、ふと疑問が浮かぶ。
「ねぇゆーくん。なんで文字が読めるの?」
当然の疑問だった。
結弦はいつも束と行動していた。
たが、束は結弦に文字を教えたことがないのだ。
結弦のことを気味悪がっている父さんと母さんも教えるはずが無い。
結弦の1歳上の姉である箒なら教えるかもしれないが、そもそも箒自信が文字を覚えているかといえば、まだ覚えていないだろう。
よって、結弦が本当に読めているとするならばそれは独学ということになる。
だが、果たしてひとつも文字を知らない者が文字を覚えることは可能なのだろうか。
日本語でなくとも英語でも覚えているのならば可能性はあるだろう。
しかし、結弦は何ひとつ文字を知らないのだ。
よって不可能に限りなく近いはずだ。
しかし結弦は束が見ていて理解しているように思える。
それに
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