暁 〜小説投稿サイト〜
IS〜僕はあなたと天を翔ける〜
第1話 色づいた者
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思わず、目をいつもよりほんの少しだけ大きく開く。

ベッドの中にあったそれ(・・)を見るべく掛け布団をそこからどかす。

そこには美しい少女が眠っていた。

いままで見てきたすべてと比べルコとすらおこがましいくらいに。

美しい

そう思った。

でも、それは色があったから。

結弦が見たことのない色をしていたから。

そんなことに気づかない結弦はベッドに登り、少女の隣に座る。

その少女の見たことの無い色をした長い髪をそっと触る。

気持ちがいい。

とてもさらさらしていて、触り心地が良かった。

「う、うーん……ゆーくんおはよぅ」

髪を撫でていたら少女が目を覚ました。

結弦は自分にゆーくんと呼ばれ首を傾げる。

「ゆーくんとは、僕のことか?」

結弦の声に眠たそうに目をこすっていた少女は固まる。

「おい、大丈夫か?」

結弦はいきなり固まった少女が少し心配になり声をかける。

だが、少女にとってはそれどころではなかった。

「ゆ、ゆーくんがしゃべったー!!」

いったいいつぶりだろうか。

結弦が声を出したのは。

少女の中で思い出そうとしてもなかなか出てこない。

多分、もう半年以上は聞いていない。

そんな結弦がしゃべったのだ。

驚かずにいられようか。

いや、不可能だ。

それから少女はなんとか落ち着き、結弦を見る。

前と変わらない。

常闇のような美しいストレートな長い黒髪。

子どもそれも3歳児とは思えない鋭いまなざしをした少女の髪と同じ紫色の瞳。

雪のように白い肌。

外見にはなんら変化はない。

それなのに突然しゃべり出した。

だとすれば、脳に何かあったのだろうか。

しかし、そんなことは少女にはわからない。

「大丈夫そうだな。それで、ゆーくんとは僕のことか?」

「そうだよ。結弦だからゆーくん!それよりどうしたの突然しゃべり出して?いつもは全く喋らないどころか声すら出さないのに」

「さてね。僕のことだ。きっと意味があるんだろう」

「声を出さないことに?」

「そうだ」

少女はふーんと疑わしげに結弦を見る。

結弦も初めて白と黒ではない、灰色ではない色を持った少女を見つめる。

そこでふと、これまでの3年間が気になった。

おそらくまだ完全記憶能力は失われてないだろうから、記憶を探せばわかるはずだ。

結弦は目を閉じ、記憶の海に潜っていく。

だが、そんなことを知らない少女は突然しゃべり出したと思ったたら今度は目を閉じ、瞑想する結弦が心配になる。

本当に脳の中で何か起こってるんじゃ……。

「ゆーくん、大丈夫?」


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