プロローグ
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目が覚めるとそこはなにもない白だけで塗りつぶされたような空間だった。
そこにあるのは精神体である青年だけ。
青年はゆっくりと移動しながら周りを観察していった。
けれどやはりその目に映るは変わらず続く白の空間。
目を凝らし先を見つめてもそこに行き止まりがあるのかさえ分からない。
青年はなぜこんなところにいるのだろうと記憶を遡りはじめた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
青年は今年で18歳となる高校3年生だった。
小中高と何事もなく進み、事件など面倒ごとにも巻き込まれない平和でつまらない人生を過ごしていた。
両親は健在で父はごくごく一般のサラリーマン。
母はたまに近くのスーパーにパートに出るだけのほぼ専業主婦。
そんな両親から生まれた青年は兄も姉も弟も妹もいないひとりっ子として育った。
けれど両親がどこにでもいる親と同じだからといって青年が普通の青年だったわけではない。
青年は小学校3年生の頃、空手を習い始めた。
けれど、1年もしないでやめた。
青年に才能がなかったわけではない。
むしろあり過ぎた。
青年は空手を習い始めて1ヶ月で同級生から中学生までの生徒は例外なく青年によって敗北した。
さらに1ヶ月で学生の段をとっている人たちこれも例外なく青年によって敗北した。
さらに1ヶ月で一般の人を含め師範を敗北に追い込みその空手道場を後にした。
小学3年生の夏のことだ。
それから合気道、柔道、剣道など様々な武を会得していく。
空手と同じ期間で。
けれどそれだけでは終わらなかった。
青年は目でみたものを、耳で聞いたものを忘れることがなかった。
完全記憶能力
青年はいままで見聞きしたものをすべて記憶していて、常人ならば苦労することでもそれにより難なくこなしていった。
彼は神に愛されていたのだ。
この世の全ての人間よりも。
テレビに見ることのあるアイドルと青年を比べてみても見劣りしないどころか、アイドルの方が見劣りするほどの容姿。
誰にでも変わらず優しく接する性格。
それがいじめっ子でもいじめられっ子でも。
自分に自信のないような子でも自分に驕ってる子でも。
誰にでも優しく。
でもそれは誰にも興味を示さない無関心なことと同じで。
青年はこの世がつまらないと感じていた。
自分と同じ存在がいればこの景色にも色が付き、興味も出るのだろうか?
そんなことを思ってみたりもした。
だけど、世界は変わらない。
あいもかわらず、世界は灰色で。
あいもかわらず、青年はひとりぼっちで。
そして、いつもと変わらない何てつまらない今日
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