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その魂に祝福を
魔石の時代
第一章
始まりの夜3
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ない。
 ……――
 気配に従い行き着いたのは、街なかにある神社だった。なのはを連れて何度か来た事もあるその場所に、最初の獲物はいた。黒く巨大な、犬の化け物。いや、化け物などと言ったら失礼か。どうやら、ソイツの望みは飼い主を守る事らしい。例え、その結果化け物になり果ててたとしても。見事な忠犬だった。
(まぁ、もうしばらく見てても良かったが……)
 その忠犬に喧嘩を売り、返り討ちにあった挙句失禁して倒れているのは、街でも高名なゴロツキだった。ゆすりたかりに暴力三昧。ついには女に手を出したらしい。全くどこまでも迷惑な奴だ。……いや、お陰で探し物が見つかったのだから、たまには役に立つというべきか。
「どちらにせよ迷惑な事には変わりないか」
 気絶している女性を見やり、ため息をつく。何であれ、この忠犬に人の血の味を覚えさせるのは忍びない。
 呻いていると、それが隙となった。その一瞬で、忠犬は襲いかかってくる。危うく首がなくなるところだった。俺を危険だと判断したのだろう。なかなか鼻が利くらしい。
「ウチの妹にも見習わせたいくらいだ」
 氷塊の盾で突進を弾きながら呟く。なのはの危機感の薄さは、一体誰に似たのやら。
「……いや、あれはただ単に両親譲りか」
 さもありなん。俺のような化け物を自分の家族に迎え入れるような連中だ。特に否定できるような言葉も思いつかず、ため息をつく。と、それが聞こえたのか、忠犬は不満そうに吼えた。馬鹿にされたとでも思ったのだろうか。
「確かに不義理ではあったかもしれないな」
 その忠義に報いるべく、意識を集中させる。実際、昨夜の魔物より、その忠犬は強力だった。おそらく実体、あるいは寄り代があるせいだろう。
 とはいえ、それだけだ。かつての自分が相手にしてきた化け犬どもに比べれば、大した相手ではない。冥府の氷で凍てつかせ、鉄風車を叩きこむ。
「じゃあな」
 幸い、それだけで事は足りたらしい。身を捩りながら、忠犬の身体が崩れていく。
「やはり俺が知る魔物化とは少し違うらしいな」
 その際に撒き散らされたのは、ヘドロのような黒いナニカではなかった。とはいえ、問題となるような違いでもない。必死になって牙をむく子犬と、その首元で光るジュエルシードを見やり、右腕をつきだす。
「さて、仕上げと行こう」
 この場合、どちらが対象となるのかは分からないが――どのみち生贄にする気はない。救済を済ませると、子犬の身体に残っていた傷が消えた。
「悪いが、これは貰っていくぞ」
 身体の具合を確かめるついでに、首輪からジュエルシードを回収する。子犬は抵抗しなかった。自分には過ぎたものだと理解したのかもしれない。誠実なだけでなく頭もいい。ますます立派な忠犬だ。頭を軽く撫でてやってから、飼い主に近づく。
「心配するな。お前の飼い主も
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