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その魂に祝福を
魔石の時代
第一章
始まりの夜3
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えている。
 それから僕は、その優しいご主人様と一緒に過ごすようになった。
「あなたが来てくれて助かったわ。女の独り暮らしだしね」
 立派な番犬がいてくれて心強いわ。ご主人様は、そう言って笑う。でも、それはどうだろう。街やテレビで時々見かける大きくて立派な身体に比べて、僕の体はとても小さい。爪も牙も、全然ダメだ。
「いいのよ、あなたはそのままで」
 小さくて柔らかな貴方が好きだもの。立派な身体を持つ仲間を見つめていると、ご主人様はそう言ってくれた。それは嬉しい。でも、僕はご主人様を守れるだろうか。いつも、それだけが心配だった。
「あら? どうしたの、それ?」
 ある日、ご主人様と散歩していると、茂みの中に光る石を見つけた。とても綺麗な石だった。ご主人様にきっと似合うだろう。そう思って持って帰る事にした。
「これでよし」
 でも、ご主人様はそれを僕の首輪につけてくれた。
 ご主人様に上げようと思ったのだけど。見上げると、ご主人様は気に入らなかったかしら、と困ったように言った。そんな顔はして欲しくない。ずっと笑っていてほしい。
 そのためなら、何でもしよう。そう思った。……そう思ったのに。
「やめて! その子に乱暴しないで!」
 嫌な匂いのする男に腕を掴まれたご主人様が、泣きそうな声で言った。男はにやにやと嫌な笑みを浮かべて、ご主人様の身体に手を伸ばす。
 僕が守らなきゃいけないのに。必死に起き上がろうとするが、痛む身体は動かない。たった一度蹴られただけなのに。この小さな身体はそれだけで役に立たなくなった。確かに噛みついたはずなのに、ちっぽけな牙は何の役にも立たなかった。必死に地面をひっかき、男を睨みつける。
 もっと、もっと大きな身体があれば。もっと鋭い牙があれば。もっと、もっと!
『その願いを、叶えましょう』
 ご主人様がくれた綺麗な石が、青い光を放つ。変化が起こった。小さな身体が大きくなり、柔らかな毛皮は固くなる。ちっぽけな爪も牙も、どんどん鋭くなった。力だって、今なら誰にも負けない。
「なっ――!?」
 ご主人様から離れろ。その男を突き飛ばす。面白いくらい遠くまで、そいつは吹き飛んだ。でも、ご主人様も地面に倒れて動かない。
 こいつのせいだ。こいつがいなくなれば、きっと目を覚ます。
「何なんだよ、この化け物は!? くそ、やめろ。やめてくれ!」
 何度蹴られても痛くも無い。無理やり抑え込み、その喉に牙をつきたてる。その直前――何か鋭い物が、僕とそいつの間を貫いた。
「よせよせ。そんなの喰ったら腹を壊すぞ?」
 邪魔をするな――振り返った先にいたのは、黒いおかしな服を着た小さな男だった。だが、それはただの人間ではない。良く分からないが、危険だった。きっとこいつもご主人様に乱暴するに違いない。そんな事は絶対に許さ
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