暁 〜小説投稿サイト〜
その魂に祝福を
魔石の時代
第一章
始まりの夜3
[6/12]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話

 ……――
 世界には――少なくとも、かつて自分が生きていた世界には、異境と言うものが存在していた。立ち入るだけで、そこに存在するものを活性化させる。そんな領域の事だ。自然に存在する魔法と言っていいだろう。巧く使えば便利だが、それは精々地形を利用するのと大して変わらなかった。だが――
「よし。これでいい」
 その特殊な供物に、あの宝石……ジュエルシードとやらの魔力を記憶させる。これで、多少は捜索も楽になったはずだ。供物の調子を確認しながら呟く。かつての自分は、異境を任意に作り出し、制御する術を見出していた。それも、かなり特異とはいえ供物魔法の一種として昇華していたらしい。供物魔法である以上は、効果もある程度は制御できる。そもそも、この異境構築の技術は『奴ら』の介入をなるべく早期に察知する事を目的として研究、開発したものだ。この宝石が事実『何でも願いを叶える』代物なら、流用は簡単である。さらに、その研究過程で他にも様々な使い方を発見していた。例えば、かつての自分が拠点としていた館を取り囲んでいた異境は、敷地を外界から隔離し特定の手順を踏むか、特定の人間しか入れないといったような効果を持たせていたはずだ。
 もっとも理論の詳細に関する記憶はまだ取り戻せていない。今この世界にある異境は、全てかつての自分が作ったものの流用に過ぎない。まぁ、今の自分では予め設計されたものを図面通りに組み立てる――その際に多少の組み換える程度の事しかできない訳だ。
(それでも、ある程度の使い道はあるけどな)
 誰に対してでもなく、言い訳をする。
 例えば、家の道場。あの場所は、身体の治癒力が高まる半面、疲労が貯まりやすくなっている。どこぞのチャンバラ馬鹿が引き籠っていた頃、身体を壊さぬように施した細工であり、この世界では初めて構築した異界でもある。ちなみに、疲労しやすいという代償はさっさと出てくるようにわざと残したものだが……今となっては持久力訓練に利用されている。それに気付いた時点で解除しようと思ったが、件のチャンバラ馬鹿に止められた。自分としては、全く不本意な結果だったが。
 そして、今細工したのは、この街全体を覆う大規模な――それこそ、今の自分が管理できる最大級の異境だった。その効果は異物や外敵の発見である。より具体的に言うのであれば、心眼の強化だ。特定の地点であれば、街全体を心眼で見渡せる。いわばこの街全体が俺の領土――縄張りだと言えた。
(まぁ、本来なら魔法使いに領土もクソもないが……)
 と、思うのは俺の魔法使いとしての記憶、または意識の根幹にあるのがリブロム――つまり、旧世界の魔法使いのものだからだろう。だが、時代というのは常に移ろいゆくものだ。価値観や立ち位置とて変わりはしない。魔法使いが――古代セルト人が人殺しに貶められたのも歴史の変化によるもの
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ